勝ったらみんなのおかげ、負けたらポイントガードのせい。その覚悟は当然大きな責任と負担を強いることになるのだが、その一方で、それこそがポイントガードをする上での楽しさ、醍醐味でもあると吉田は言う。
「負けたら自分のせいで、勝ったらみんなのおかげって思えるポジションはポイントガードでしかないから。そう思えるのが楽しいかな。責任があるし、そういう責任を自分が負ってポイントガードとしてコートに立っている。チームがそんな私をポイントガードとして使ってくれている。それがすごく楽しいんです」
むろんプレー面での楽しさもある。1月におこなわれた皇后杯の優勝記者会見で「私のロングパスを林(咲希)が3ポイントシュートで決めてくれたことに一番テンションが上がった」と言うように、自分のパスで誰かが気持ちよくシュートを打って、それを決めてくれるワンプレーが何よりも楽しい。
しかしそれと同じか、もしかしたらそれ以上に責任を持ってプレーすることに吉田は喜びを感じている。いや、責任を持ってプレーしたうえで得られる勝利に喜びを感じているといったほうがいいかもしれない。
「キャプテンって孤独なんですよね。みんなのことを考えなきゃいけないし、でもチームメートと必要以上に仲良くなりすぎてしまうと、厳しいことを言ったつもりが厳しく伝わらないこともある。そういうことも実際にありました。ときには嫌われることも言わなきゃいけない。それはもう孤独ですよ。みんなでひとつのチームとしてやっていて、いい意味で仲良くなってきて、プレーも合ってきて、信頼関係もよくなってきているときもあるけど、それが“なぁなぁ”になったときにはキャプテンが言わなきゃいけない。すごく嫌だけど言わなきゃいけないってなったときに、やっぱり嫌われることを覚悟で言うんです。チームのためだから。それがキャプテンの仕事。それにはすごく孤独を感じていましたよね」
それだけにキャプテン時代に得た優勝は、キャプテンではなかったときと比べて喜びがひとしおだと吉田は認める。孤独を感じ、苦しんだ先にある栄光。そういえばかっこよく聞こえてしまうかもしれないが、それはキャプテンを経験した人間にしかわからないメンタリティなのかもしれない。