「デンソーは若いチームなので自分が今まで経験してきたことを生かせられるかなと感じています。これからも今までどおり、チームが勝つために自分が何をすればいいのか、試合の局面ごとに自分がうまく生きるようなプレーができたらいいなと思っています」
目標は日本一になること。トヨタ自動車時代から何一つ変わらぬ目標である。デンソーへの移籍はその目標を変えずに、ただ気持ちを新たにした近藤楓「第2章」の始まりにすぎない。一度は引退も考えたが、それさえもすでに過去のこと。今は前だけを向いて第2章のページを1枚ずつ、慈しむようにめくっている。
そんな近藤だからこそ、東京オリンピックを来年に控え、もう一度日本代表に復帰したいという気持ちはないのかと聞いてみた。
彼女はこう答えた。
「現実的には厳しいかなというのは感じています。だから今自分にできることを精一杯やるしかないのかなって思っています」
現実的には厳しいかもしれない。でもチャンスがないわけでもない。そう捉えるのは近藤が「控えめな負けず嫌い」だからだろう。まだ私は終わっていない。
「小さいときからコツコツやってきたことが、トヨタ自動車に入ったり、ユニバーシアードに行ったり、日本代表に選ばれてオリンピックに出たり、そうした結果につながっています。そこ(日本代表)を目指してという気持ちはありますが、とにかく日々の積み重ねを大事にしていくことが、今の私にとってもすごく大切なことかなと思っています」
一歩ずつ踏み出した足元に生まれる小さな“欠片”を拾い集めれば、それがやがて大きな“結晶”になる。近藤楓とは地に足をつけられる、強い選手である。
デンソーアイリス #20 近藤楓
やがて大きな結晶(チカラ)へと
part1、part2、part3
文 三上太
写真 吉田宗彦