part1「3度目のケガを克服し、新天地へ」より続く
チームを支える大黒柱へ
河村美幸は、井上眞一、木村功、丁海鎰といった日本国内で輝かしい実績を残しているコーチに多くのことを学んできた。移籍したトヨタ自動車アンテロープスでは、現役女子スペイン代表のヘッドコーチでもあるルーカス・モンデーロの指導を受ける。
「通訳を介するヘッドコーチのもとでプレーするのは初めてなので、本当に一字一句を逃さないようにしていないとわからなくなるというか、説明が難しいところもあります」
ただ、モンデーロヘッドコーチは集中力の欠けたミスにこそ厳しい叱責をするが、積極的な姿勢がミスになったときはそれを認め、厳しく追及することはない。何かアクションを起こそうとして、結果としてそれがミスになれば「それを教えるのが私の仕事です」というスタンスなのだ。だから練習の雰囲気もおのずと前向きになる。それは河村が近年感じていなかった感覚でもあった。
「ヘッドコーチ自身も盛り上げてくれるから、選手もやろうという気持ちになって、いい雰囲気のなかで練習ができています。実際にどんどんいいプレーが出てくるし、消極的なプレーがなくなってくるのを感じています」
ヘッドコーチだけではない。アシスタントコーチにも大神雄子、小笠原真人という前向きで、情熱的なコーチがいる。特に大神は高校の先輩であり、良き相談相手でもある。移籍をするときにも相談をしたし、チームに入ってからもモンデーロヘッドコーチのバスケットの理解に苦しんでいると、アドバイスをくれる。
「どうしても通訳を介して説明するから、自分たちも練習中にわからなくなることがあるんです。でもシンさん(大神)がその意図をくみ取って、『今ルーカスが言ったのは、こういう意味だよ』って、自分たちが水分補給をしている間に一言、二言、ポンと言ってくれます。シンさんはルーカスのバスケットをわかっているから、それを自分たちに伝えてくれることで理解できるときもあるんです」
大神が中国の女子プロリーグ・WCBAの山西フレームで1年間プレーしたとき、ヘッドコーチを務めていたのがモンデーロヘッドコーチだった。以後、大神はトヨタ自動車に移籍し、引退してからも、女子ロシアリーグのチームへと移ったモンデーロコーチのもとに赴き、彼のバスケットや世界のバスケットをつぶさに見てきた。そうした経験を今、河村たちが受け継いでいる。