スタメンに抜擢された開幕戦で11連覇中の女王から勝利を奪う
開幕戦で女王JX-ENEOSサンフラワーズから勝利を奪った富士通レッドウェーブ。「最初から自分たちのディフェンスや今まで練習してきたことを出すことができました。選手がそれぞれ自分の役割に徹し、チーム一丸となって勝利をつかむことができました」と勝因を挙げたのはスタメンの内野智香英である。翌2戦目は64-82でJX-ENEOSがその強さを示す結果となった。「開幕戦で良かったディフェンスを崩されてしまい、そこで踏ん張れずにずるずるとやられてしまいました」という課題も見えた。
「個人的にはあまりよくなかった」と内野が振り返るJX-ENEOSとの2連戦を経て、とどろきアリーナで迎えた日立ハイテククーガーズ戦では3Pシュートを4本沈め、16点を挙げる活躍を見せる。
「JX-ENEOS戦で3Pシュートの確率が全然良くなかったので、今日はたとえ入らなくても自分のシュートを思いっきり打っていこうと思って臨みました。1本目に入ったのは良かったですが、その後が続かずに前半は1/4本でした。でも、後半に切り替えることができ、3本決められました。仲間たちが良いパスをしてくれたおかげで、気持ち良く打つことができました」
プレー中と普段のギャップがすごく大きいと周りからもよく言われます
内野のバスケセンスは目を見張るものがある。しかし、すごいプレーもどこか淡々とプレーしているように見えてしまい、あまり熱量が伝わってこない。勝手な印象だが、コーチの言うことを全うし、自ら冒険するようなタイプではないと感じていた。しかし、昨シーズンはシャンソン化粧品シャンソンVマジックから富士通へ移籍し、今年は3×3にも挑戦している。「昨シーズンはシックスマンでしたが、今シーズンはスタートで出ることを目標にして準備をしてきました」と、スタメンを勝ち獲る野望を持っていたことにも驚かされた。
「プレー中と普段のギャップがすごく大きいと周りからもよく言われます」と話すトーンもおっとりしている。しかし、一歩コートに入れば、「マッチアップする相手には負けたくない」と別人格にスイッチが入る。内に秘めた熱き思いを探りたくなった。
「ステップアップしたい」という思いで富士通への移籍を決めた。そのときに背中を押し、協力してくれた多くの方に恩返しするためにも、「シャンソン時代よりももっと積極的にプレーすることは心がけています」。スタメンを勝ち獲るために「自分の役割である3Pシュートを決めること、リバウンドやルーズボールなど身体を張ることはサマキャン(サマーキャンプ)や練習試合から意識して取り組んでいました」とアピールをしてきた。3×3に挑んだのもステップアップするためである。
「自分よりも大きい相手をマークする機会が多く、ディフェンスのコンタクトやフィジカルの部分では、JX-ENEOS戦で梅沢(カディシャ樹奈)選手とマッチアップをしても生かされていました。3×3をやる以前よりも、ゴールに向かう意識は高くなったと思います」
3×3での活動を終えてチームに戻ったときには、「上手くなって驚かせたいという思いも少しはありました」というしたたかさもある。BTテーブスヘッドコーチからスタメンを告げられたのは、開幕1週間ほど前のことだった。真っ新なコートに立ち、JX-ENEOSに勝利したことが自信につながっている。
「自分たちのバスケットを40分間やり続ければ、勝てない相手はいないと思っています。一戦一戦しっかり勝って、ファイナルを目指します」
文・写真 泉誠一