この1勝は応援のおかげです
2012年からWリーグが1リーグ制になり、自動昇格した山梨クィーンビーズは5シーズンをトップリーグで戦って来た(※2014年から2年間は関東実業団リーグに参戦)。その戦績は7勝130敗、1勝も挙げられなかったシーズンが2度(2012-13、2016-17)もある。2017-18シーズンの3勝が最多というドアマットチームであり、勝ち試合を見ること自体がレアケースな山梨QBが変化を見せた。昨シーズン6位の羽田ヴィッキーズを73-61で破り、トップリーグ参戦初となる開幕戦勝利を飾った。
25点を挙げた水野菜穂は、「この勝利は素直にうれしいです。昨シーズン、羽田戦は2試合とも悔しい結果だったので、絶対に負けられないと思って準備をしてきました。それがしっかり形になって良かったです」と笑顔を見せる。「一人ひとりがゴールに向かう姿勢が良かったです。この1勝は応援のおかげです」という岡萌乃は14リバウンドを獲って勝利に貢献した。平日昼間の開催だったにも関わらず、多くのファンと勝利を分かち合うことができた。
勝って兜の緒を締めていたのは、伊與田好彦ヘッドコーチである。
「選手たちには言っていませんが、まだ1/22試合でしかない。開幕戦で勝ったからといって、あと全部負けたらこれまでと変わりません。自分たちがやるべきことをどれだけできたかどうかが、今後につながっていきます」
翌日の試合で2連勝とはいかず、出だしの点差が悔やまれる61-69で惜敗。しかし、これまでとは少し違った山梨QBが見られている。
勝負はリバウンドとルーズボール、他にはないんだ!
昨シーズン途中から山梨QBの指揮を執る伊與田ヘッドコーチは「5人で攻めて、5人で守ること」を強調しており、その改革は実にシンプルである。
今オフの取り組みについて水野は、「やっぱり個人一人ひとりで勝っていかなければ厳しいものがあるので、1on1の強化をしてきました」と言う。オフェンスではショットクロックに関係なく、タイミングが合えば積極的にゴールを狙う強気の姿勢が見られた。また、コンビネーションプレーの精度も上がっている。「幸い、日本代表に選ばれるような選手がいないため、みっちり練習できました」と勝利インタビューでの伊與田ヘッドコーチはユーモラスに答えていた。
「自分たちは小さくてフィジカルも負けてしまうところがあるので、全員で決まりごとを徹底して守る練習をしてきました」と水野が言うように、ディフェンスではチーム力で体格差を補う。その取り組みは世界と戦う日本代表と同じであり、アジアカップ4連覇を果たしたチームから「リバウンドやディフェンスの徹底すべき当たり前のことを当たり前にやっていたので、そこは参考になりました」と水野は刺激を受けている。