誰かを、もしくはチーム全体を変えようと思えば、まずは自分から変わるしかない。リーダーはときに厳しい言葉も掛けなければいけない損な役回りだが、自分が変わることで目標であるリーグ制覇が近づいてくるなら、彼女はその役割さえ厭わない。
「今年は本当にうまい子たちが入ってきてくれたので、彼女たちが思い切りバスケットをできる環境だったり、スタメン、ベンチメンバーに関わらず、コートに立ったときに自分のプレーを発揮できるように持っていこうとしているんです」
そうして生み出された思い切りの良さが今年の皇后杯で表れた。2年ぶりに決勝戦まで勝ち進み、2年前に叩きのめされたJX-ENEOSを相手に堂々と渡り合ったのである。
もちろん若い選手たちを言葉で引っ張る以上、自分自身もその言葉をオウム返しに受け止め、プレーや態度でも示さなければいけない。
「やはり言葉にして言う以上、自分もそれをやらなければいけません。自分ができていないと周りも聞かなくなるし、言いづらくもなる。とにかく自分は自分に厳しくしなければいけないし、なおかつ周りを見て、言うべきところをしっかり言うようにしています」
タイプの話に戻れば、リーダーシップを発揮するタイプではないのと同時に、髙田は自分自身を「厳しいタイプでもない」とも言う。そんな髙田がリーダーシップを発揮するために、自分にも厳しくなっているのを見たら、周りの選手たちもこれまで以上にバスケットに対して真剣に向き合わざるを得ない。そうした空気のなかでおこなわれる練習には、自然と緊張感が生まれ、より試合に近いパフォーマンスも引き出されてくる。
「まだまだですけど、練習の雰囲気は今までよりも変わってきていると思います」
会社のバックアップに感謝して
そしてもうひとつ、チームが変わってきている要因がある。それはアイリス専用の体育館の竣工だ。これまでは工場内にある、一般の社員も使用する体育館を使っていたが、一昨年の12月からは寮に直結する専用の体育館で練習をしている。驚くべきはその広さだ。Wリーグのチームで専用の体育館を持っているチームはいくつかあるが、コート2面が広々と取れる専用体育館を持っているチームは、少なくとも筆者が見てきたかぎりでは、ない。トレーニングルームやケアルームがアリーナに直結しすぐに移動できるし、いつでも、自分たちのやりたいときに練習ができるそうだ。
「体育館ができたことで選手たちのモチベーションが上がったところもあると思います。そのために会社も作ってくださったわけですし、選手も変わらなければいけません。当然、次は結果を求められるわけですから、自分たちはこの環境で優勝しなければいけないと思っています」
リーダーの積極的な変化に、会社の強力なバックアップも重なってプレーオフ進出を決めたデンソー。しかし目指す頂はけっして低くない。
日本一になるために──髙田真希とデンソーアイリスはさらなる変化と進化を求めて、日々の練習で、これまで以上に自分たちを磨いていく。
文・写真 三上太