Wリーグ開幕記者会見時、注目するチームメイトを聞かれたJX-ENEOSサンフラワーズの#12吉田亜沙美キャプテンは、「梅沢カディシャ樹奈」の名前を挙げた。
「2年目ですし、アジア競技大会など日本代表としていろんな国際大会での経験を経てきた今シーズンは活躍してくれると思っています。リバウンドやインサイドの力強いプレーに期待しています」
当の本人は「うれしかったけど、ビックリしました」と言うとともに、「その期待に応えなければいけないと思いましたし、がんばらないといけないです」と気を引き締める。2シーズン目の梅沢選手はこれまで全ての試合を先発で起用されている。
昨シーズンまでは、#10渡嘉敷来夢選手と#21大﨑佑圭選手による日本の屈指のコンビネーションでインサイドを支配してきた。しかし、大﨑選手は新しい命を授かったことで、今シーズンは選手登録から外れている。引退したわけではなく、ママとなって再びコートに戻ってくる日を楽しみにしたい。
188cmの梅沢選手の役割を聞けば、「やっぱりリバウンド!」と元気な答えが返ってくる。10試合を終え、平均6.4リバウンド。得点は平均11.3点を挙げ、渡嘉敷選手の20.2点、#52宮澤夕貴選手の13.1点に続く。昨シーズンの大﨑選手は平均14.2点、8.6リバウンド。「リバウンドをがんばれば得点にもつながる」ことを第一に考え、大きな穴をしっかり埋める活躍を見せている。
大﨑選手は以前、「タク(渡嘉敷選手のコートネーム)とのコンビは夫婦のようなもの」と阿吽の呼吸を言い表していた。その二人に負けないように、梅沢選手はコミュニケーションを取るところから取り組みはじめる。
「タクさんは、プレーしやすいように本当にいろいろと声をかけてくれます。それに応えられるように、もっともっとタクさんと協力してセンタープレーができるようにならなければいけません」
ポイントガード陣との連携も同じである。先発で一緒に出る#1藤岡麻菜美選手には、「こうして欲しいなど動きの指示をしてくれます。それに対してどんどん合わせていけるようにしたいです」と実戦を通じて、鋭意勉強中だ。
JX-ENEOSのお守りのような存在と化していた大﨑選手は、どんなに点差が開いても交代はいつも一番最後。それは内海知秀ヘッドコーチのときも、トム・ホーバスヘッドコーチでも、そして佐藤清美ヘッドコーチも同じであり、絶大なる信頼を得ていた。梅沢選手と同じ2シーズン目の大﨑選手のスタッツを見ると平均9.46点、4.5リバウンドであり、28試合中先発を任されたのは12試合だった。先発の座を確実なものにしたのは4シーズン目であり、平均21.45点、8リバウンド。そのときのレギュラーシーズンも22試合であり、梅沢選手にとって目標値となるかもしれない。
渡嘉敷選手や藤岡選手からいろんなことを学び、吸収している梅沢選手。では、今シーズンの注目選手に挙げてくれた吉田選手からは、どんなアドバイスをもらっているのだろうか?
「アドバイスは……まだ受けてないです。でも、きっと影ながら応援してくれているんだと思います」
放任主義とも取れるが、それこそが期待の裏返しだろう。梅沢選手もその気持ちをしっかりと受け止めており、「期待してくれていることを後悔させないくらいがんばりたいです」と日々成長を遂げている。
Wリーグは一時中断し、12月1日-2日に行われる皇后杯2次ラウンドに備える(12月8日より再開)。皇后杯5連覇中のJX-ENEOSは、リーグ戦とともに6年連続の2冠を目指すのは当然である。しかし、皇后杯ファイナルラウンドまでに対戦する上位チームは現在2位の三菱電機コアラーズだけ。それ以外の上位チームとは年明けが初対戦となり、高さとパワーを生かした梅沢選手の活躍が必要不可欠でもある。
告知:弊誌フリーペーパー次号(12月号)は20周年を迎えたWリーグ特集!梅沢選手の『20歳の誓い』が掲載されます。
文・写真 泉 誠一