昨シーズン、8位でプレーオフに出場した東京羽田ヴィッキーズを73-58で破り、ラストゲームを勝利で終えることができた。2001-02シーズンよりWリーグに昇格した日立ハイテククーガーズにとっては、初のプレーオフ進出である。
振り返れば、昇格したシーズンの5位が最高位であり、その後は下降線をたどっていく。2011-12シーズンまでは昇降格ある2部リーグ制だったが、その間に2度も下部リーグへの降格を経験する。その後、12チームに拡大して1リーグ制となったWリーグでも、10位ー10位ー11位ー10位ー10位と下位争いから抜け出せず、苦戦を強いられる。勝利を計算できる相手は同じ下位チームしかいなかった。
しかし今シーズンは、シャンソン化粧品シャンソンVマジックに1勝、三菱電機コアラーズには2勝を挙げる成長が見られている。上位チームから白星を奪って勝率を伸ばしたことで新境地へとたどり着く。8位の日立ハイテクはプレーオフ・クォーターファイナルで、1位のJX-ENEOSサンフラワーズとの対戦が決まった。
チームとしてはもちろんだが、選手としても初めてのプレーオフに臨む八木香澄キャプテンと鶴見 彩サブキャプテンにその心境を伺おう。
『当たって砕けろという感じで楽しみたい』八木 香澄キャプテン
ーー点差を離して最終戦を勝てたことはプレーオフに向けても良い弾みになるのでは?
チームとしても、個人としても初めてプレーオフに進出することになります。挑戦者という気持ちを一番に持っていますが、自分たちがやることは変わりません。相手がどこであろうが、しっかり自分たちが準備してきたことを表現できれば良いと思っています。
ーープレーオフ進出を決めた今シーズンの成長はどう感じていますか?
日々、個人スキルを上げるように努力していますし、シュート力も一人ひとりが昨シーズンよりも上がっています。何よりもコーチの指示をみんなが徹底して、それぞれの役割を果たしていることが今シーズンの結果につながっていると思います。
ーープレーオフで対戦するJX-ENEOSの印象は?
やっぱり高さもありますし、日本を代表する選手がたくさんいる中で挑戦者という気持ちを忘れずに自分たちのバスケットをし、応援してくれている皆さんのためにもしっかり出して行ければ良いと思っています。
ーー初めてのプレーオフは楽しみの方が強いですか?
そうですね。本当に当たって砕けろという感じです。このメンバーで戦えるのも残り少ないので、楽しんでプレーしたいです。
ーー藪内(夏美)ヘッドコーチは積極的にメンバー交代をするのでその分、全力投球できているのでは?
「常に全力で戦いなさい」とヘッドコーチには言われているので、出てる限りは全力プレイーを心がけています。
ーー会場を緑色に染めるファンの声援も心強いのではないでしょうか?
あのようなナンバーリングを着て応援するのも今シーズンから取り入れていて、本当にファンの方々の応援なしでは戦えません。リーグNo.1の応援だと思ってるのですごく力になりますし、コートでプレーしていてもしっかり声援は届いてます。本当に感謝しています。
『最初の1秒からエンジン全開で全員バスケ』鶴見 彩サブキャプテン
ーー昨シーズン、プレーオフに行けずに終わってしまったときの心境は?
たかだか1試合や2試合かもしれないプレーオフですが、それを経験できるかどうかは全然違うと思っています。1シーズン通してやってきたことが表現できる特別な試合であり、レギュラーシーズンとは違う戦いを経験できなかったことが悔しかった。ガードとして大事なところでチームを引っ張れなかったので、その部分は本当に悔しさしかなかったです。
ーー最終戦を勝って終われましたが今のチーム状況は?
みんないろんなところをケガしていましたが、最終戦に向かって全員で良い練習ができていました。その雰囲気がそのままこの試合に出たと思います。
ーー序盤から点差を離して流れをつかむことができましたが、プレーオフこそ最初の勢いが必要では?
みんなの気持ちが試合の入りからすごく出ていたので、それをうまくプレーにつなげられたのは良かったです。プレーオフははじめてですが、みんな一発勝負に強い部分も持っていると思っています。自分たちのバスケットをやりきれれば戦えるとも思っているので、しっかりとコート上で表現したいです。
ーーJX-ENEOSの印象は?
今シーズン3回戦いましたが1試合目よりも2試合目、2試合目よりも3試合目と点差はすごく開いていますが、手応えは少しずつ上がってきていると感じています。それをさらに良い状態でもっと爪痕を残したり、イヤな感情を与えられるようにしたいです。可能性は絶対にゼロではない。1%でも可能性があれば、全員でそこに向かっていけば何か得るものがあると期待しています。
ーープレーオフ進出を決めた今シーズンの成長はどう感じていますか?
「自分たちのチームだ」という意識が、シーズンを通して感じることができています。そこが昨シーズンとは違うと自分たちの中でも感じられた部分です。強いチームはプレーオフに出ることが当たり前であり、そこはまだ差があります。日々の練習の質がコート上でのワンプレーワンプレーに出てしまうので、そこを突き詰めていけばもっと上位に食い込んでいけると思います。
ーー何が起こるか分からない一発勝負であり、アップセットできる可能性が一番高いのが初戦です。
まだ自分たちの戦いは終わってないですし、次の試合のために今まで33試合を戦ってきました。最初の1秒からエンジン全開で、全員で戦っていきます。
今シーズンのプレーオフは、はじめて一発勝負のトーナメントが採用される。これにより、絶対女王JX-ENEOSの牙城を崩せるか!? 何が起こるか分からない”マーチマッドネス(熱狂的な3月)”は今週末より開幕。藪内ヘッドコーチは、「何かを起こすための下準備をしていくだけです」と不敵に笑った。
プレーオフスケジュール
■クォーターファイナル
3月17日(土)秋田県立体育館
13:00 シャンソン(4位)vs 富士通(5位)
【今シーズン対戦成績】2勝:1勝
15:00 JX-ENEOS(1位)vs 日立ハイテク(8位)
【今シーズン対戦成績】3勝:0勝
3月18日(日)秋田県立体育館
13:00 トヨタ自動車(3位)vs 三菱電機(6位)
【今シーズン対戦成績】3勝:0勝
15:00 デンソー(2位)vs トヨタ紡織(7位)
【今シーズン対戦成績】3勝:0勝
■セミファイナル ※NHK-BS1生中継
3月24日(土)大阪市中央体育館
14:00〔デンソーorトヨタ紡織〕vs〔トヨタ自動車or三菱電機〕
16:00〔JX-ENEOSor日立ハイテク〕vs〔シャンソンor富士通〕
■3位決定戦
3月25日(日)13:00 大阪市中央体育館
■ファイナル
3月25日(日)15:00 大阪市中央体育館 ※NHK-BS1生中継
文・写真 泉 誠一