昨年、2シーズンぶりにWリーグへ復帰した山梨クィーンビーズ。しかし、1勝もすることはできず27連敗に終わった。その山梨が12月2日、Wリーグ復帰後40試合目の新潟アルビレックスBBラビッツ戦でようやく勝利を挙げることができた。しかも2連勝。2013-14シーズン後、チームの環境を整えるために一度Wリーグから撤退したため、前回勝利を挙げたのは2014年3月3日のアイシンAWウイングス戦まで遡らねばならない。実に1370日ぶりの勝利であった。
今節は同じく2勝で並んでいた東京羽田ヴィッキーズとの対戦であり、勢いに乗って3勝目への期待が高まる。だが、初戦は62-89と27点差をつけられ大敗。水上豊ヘッドコーチは「点差ほど負けた感じはしていない。相手のシュートが入りすぎたこと、自分たちのミスから自滅した部分もあったのでそこを修正していこう」と自信を持たせて2戦目に臨んだ。
山梨の今シーズンのスローガンは、「NEVER GIVE UP!!!〜つなぐ想い つながるTeam〜」。それを体現するように、最後までボールに食らいつき、諦めずに戦い抜いたがあと一歩及ばず、77-79で敗れて3勝目はお預けとなった。水上ヘッドコーチは、「勝ちたいという気持ちが少しずつ出てきている。特に後半はリバウンドにしても、ディフェンスのプレッシャーにしてもその気持ちが見えたので、次につながるゲームはできたかな」とチームとしては着実に前進している。
ようやくWリーグのチームっぽさが出てきた2年目の今
元トヨタ自動車アンテロープスの一員として4シーズンプレーした後、一度Wリーグを引退した藤井美紀選手。その後はクラブチームでプレーを続け、山梨のWリーグ復帰とともにトップリーグに戻ってきた。勝てずに終わった昨シーズンは、「ガムシャラに一人でやってました」と振り返る。スタッツを見ても、平均14.5点と二桁得点をマークしているのも藤井選手だけだった。だが、バスケットはチームスポーツであり、一人では勝てないことを痛感。今シーズンは率先してコミュニケーションを取りながら、これまでの経験を仲間たちに注入している。
「自分の流れにみんなを巻き込んで、一緒にチームを勝利に導くことをすごく考えているし、そこがすごく苦労しているところです。でも、少しずつそれが浸透し始めてきているので、このまま後半に向けてステップアップできるようにしたいです」
その苦労が実った新潟戦での勝利だったが、そのうれしさよりも「今日の2点差で負けた悔しさの方が大きいです」と全く満足はしていない。
昨シーズンの16人から14人にロスターを絞り込んだ今シーズン。多くの試合で10人以上を起用しており、選手層に厚さが増している。藤井選手の他にも、ルーキーの内堀紫菜選手と横井美沙選手が現時点で平均2桁得点を挙げるまでになった。同じガードとして、コート上では内堀選手に声をかける機会も多い。「言ったことを素直に吸収してくれる分、一番伸びる選手かなと思ってます。ガードとしてのゲームメイクに関しては、これまで経験してきた全てを伝えていきたいですし、取りこぼしなく次につなげられるようにも毎試合声をかけるようにはしています」という藤井選手の取り組みが、チーム力として現れている。
昨シーズンと比べてベンチの盛り上がりなど、チームの雰囲気が増しているようにも感じる。そう伝えると、藤井選手も同じように実感していた。
「トヨタのときは当たり前のようにパスした人とアシストした人がお互いに指差しをするのですが、それが昨シーズンまではなかったり、自分が盛り上がっても周りがシーンとしていて少し寂しいと思ったりもしていました。今シーズンは指差しをしたら相手も返してくれるようになったので、少しは成長してるのかな。ようやくWリーグのチームっぽくなってきたと感じられ、うれしく思います」
課題を克服するためにも重要なオールスター&皇后杯ブレイク
唯一、12月16日(土)に大田区総合体育館で行われるオールスターに選出された藤井選手。「昨年は緊張しましたが、今年も同じようなメンバーなので少しは気持ちが楽ですし、全力で楽しみたいです」と2度目の夢舞台に立つ。チームワークの大切さを思い出させてくれたのは、昨年のオールスターでもあった。
「いつもとは違うチームの選手が集まり、1日だけのチームにも関わらず、みんなが励まして盛り上げていました。シュートを決めれば自分以上にすごい喜んでくれたことで、こっちも笑顔になるくらいでした。あらためてチームワークの大切さを感じました」
「経験不足」を勝ち切れない原因に挙げた藤井選手。「身体能力の差はさほどなく、身長の部分だけです。それ以上に気持ちの部分で勝てることもあります。でも、経験の差は本当に大きく、少しの差でも大きく開かれてしまうものです。それを分かっている分、自分から伝えるように今シーズンは課題として取り組んでいます」と藤井選手はコミュニケーションを取りながら、チームワークを向上させている。もう孤軍奮闘していた昨シーズンの山梨ではない。
水上ヘッドコーチは「インサイド陣の得点とリバウンド」を明確な課題とし、それを克服するためにもオールスターと皇后杯で空く、この1ヶ月間は重要である。
「スピードを落とさないようにしながらゲーム感覚はキープしたい。しっかりオフを与えて体調を整えつつもハードなファンダメンタルまたはしっかりウエイトトレーニングをさせ、体作りからシュートの精度を上げる練習もさせていきたい」という水上ヘッドコーチは山梨県内の男子高校生との練習試合も組みながら強化していく。
1リーグ制になってからの山梨は2013-14シーズンの2勝が最高勝利数であるが、その記録を塗り替える可能性は十分にある。水上ヘッドコーチも手応えを感じつつ、「選手たちはもっと自信を持って戦って欲しい。羽田、新潟、アイシン、日立ハイテクとは対等に戦えており、いくつ勝利を勝ち取れるかに挑みたい」と後半戦を楽しみにしていた。
次戦は1月13日-14日、山梨県南アルプス市櫛形総合体育館に三菱電機コアラーズを迎え、ホームゲームからWリーグは再開される。
山梨クィーンビーズ
Wリーグ 三井不動産オールスター 2017-18 in TOKYO
文・写真 泉 誠一