1971年創部の長い歴史を誇る東京羽田ヴィッキーズ(前・エバラヴィッキーズ)は昨シーズン、Wリーグ参戦5年目にしてついにプレーオフ初進出を果たした。新体制となった今シーズン、本橋菜子選手が2年目ながらキャプテンを任されている。開幕から2週連続で東京開催のホームゲームとなり、「より期待してくれる方が増えている」ことを本橋選手は実感していた。
「ファンの方々の声援がすごく聞こえてきて、すごくうれしかったです。でも、試合を振り返るとまだまだダメだとあらためて思いました。『皆さまを元気にする』ためにも、一つひとつの試合を大事に戦っていきたいです」
『皆さまをもっと元気に!!』が、東京羽田の合い言葉だ。必死に戦う姿は、きっとファンに元気を与えられている。だが、“もっと”元気にするためにも初勝利が待ち遠しい。
試合毎に見られる成長と課題を糧に一歩ずつ前進
第2節、富士通レッドウェーブとの初戦は51-76で敗れた。デンソーアイリスとの開幕戦から連敗スタートとなったが、少なからず可能性は見せている。富士通との2戦目は79-84、5点差の惜しい試合であった。
デンソー戦はオフェンスが、続く富士通との第1戦はディフェンスで、棟方公寿ヘッドコーチはポジティブな点を挙げている。しかし、「先週できていたオフェンスの思い切りの良さが見られず、ここが安定しないチームの要因です。一つひとつ、課題をクリアしていきながら、少しずつ変わっていくしかないと実感しています」と現実を直視しながら、強化を進めている。翌日は思いきり良いオフェンスを取り戻し、接戦に持ち込むことができた。
棟方ヘッドコーチが目指すのは“走るバスケット”である。平均173.6cmと小さな東京羽田にとって、180cm台の選手を6人擁するデンソー、そして富士通も先発の2人が180cmを越えており、高さで上回る相手との対戦が続いた。棟方ヘッドコーチが求めるのは、とにかく走って「速い展開で攻撃回数を増やしたい」。小さいからこそ、「平面で負けることは許されない」とディフェンスではさらに妥協を許さない。大きな相手に対し、球際をしつこく守るディフェンスでミスを誘発し、チャンスを作っていく。しかし、その後のオフェンスでは、「ボールも人も止まってしまうと孤立してしまい、1on1ではなかなか得点を獲るのは厳しい部分もあります。今はまだ苦し紛れに個人プレーで打開してしまってうまく点数につなげられていません」と本橋選手が話すように、チーム全体として余裕が欲しいところだ。
デンソー戦も富士通戦も、目指すべきバスケットができている時間帯は、ビハインドを背負っている状態からみるみる点差を縮めていった。あと一歩の場面でやはり余裕が見られず、リードを奪いきれなかった点は課題である。「オフェンス面は気持ちが焦ってしまっているせいか確率が悪すぎます。無理にシュートに行ってしまってチグハグになってしまっていました」と棟方ヘッドコーチも振り返っている。それでも翌日の富士通戦は少しずつ成長を見せており、今シーズンの初勝利もまもなくやってくることだろう。
初勝利を向け、今週末はホームで新潟と対戦!
昨シーズン準優勝のトヨタ自動車アンテロープスから移籍してきた丹羽裕美選手は、本橋選手にとって早稲田大学時代の先輩である。「一緒にコートにいるとすごく心強い存在です。ゴール下では誰よりも体を張ってくれており、精神的にも支えられています」と言うように、チームの柱となってインサイドで泥臭いプレーをしながらチームを鼓舞する。富士通との初戦で負けた後、丹羽選手はコーチ陣と反省点を振り返りながらプレーに対するアドバイスを受けていた。その成果は早くも見られ、翌日は27点を挙げる活躍だった。
昨シーズンはベスト8に入り、プレーオフ進出を決めた東京羽田だが、上位チームにはひとつも勝ち星を挙げられていない。本橋選手は、「プレーオフ進出だけでは満足もしていない気持ちが自分たちの中にはあります。今年はヘッドコーチも代わって、少しずつですが求められているバスケットが浸透してきています。そのバスケットを信じて、上位のチームにひとつでも勝てるようにしたいです」と意欲を見せ、今後もチャレンジは続く。
東京羽田に対するファンの期待が高いのは、会場に行けばうかがい知ることができる。
「会場に足を運んで応援してくれている方々も多くいますし、さらに今シーズンからはW-TVで無料配信されていることもあって、すごく注目されていると感じています。その期待を常に意識しながら、ガッカリさせるような試合だけはしたくないと思って戦っていきます」(本橋選手)
次節はともに連敗中の新潟アルビレックスBBラビッツと対戦。3週連続ホームゲームの東京羽田は、中央区総合スポーツセンターで初勝利をつかみたいところだ。
文・写真 泉 誠一