Wリーグは2次ラウンドを終え、レギュラーシーズン最終順位が確定し、プレーオフの組み合わせが決まった。
27戦全勝──オールジャパンを含め、負け知らずのままJX-ENEOSサンフラワーズが突っ走っている。
最終戦は2位のトヨタ自動車アンテロープスを相手に、81-59と22点差をつけて圧勝した。だが、トム・ホーバスヘッドコーチも、エース渡嘉敷来夢選手も、試合中はずっとイライラしていた。ベンチからは怒号も飛んでいる。
「全然調子は良くなかったです。見ていても分かるように、良くなかったじゃないですか?」
試合を終えた渡嘉敷選手は逆に問いかけてきた。序盤から岡本彩也花選手が3Pシュートを決めたことで点差を広げたが、確かにプレーはどこか散漫にも見える。逆にトヨタ自動車の方が点数にこそつながらなかったがドライブアタックで仕掛けてファウルをもらったことで、吉田亜沙美選手は4つ、間宮佑佳選手をファウルアウトにしている。また、高さに対するディフェンスも、しっかりインサイドを固めていた。集中力を欠いた女王の戦いに、点差ほどの圧倒さは感じられなかった。
「1次ラウンドはすごく良かったですが、それに比べると今はあまり良くない印象をトムは持っているようです。だから結構怒っていますが、私もそれは感じています。自分も声を出して指摘しなければいけないし、喝を入れる意味でも言うようにはしています」
9連覇を狙う女王たるもの一切の隙を見せず、完全勝利が求められる。その強さは結果だけでなく、内容にまで及ぶ。その信念に揺るぎはない。
何よりもこれから始まるプレーオフは、クォーターファイナルとセミファイナルは3戦2先勝方式、ファイナルに至っては5戦3先勝方式となる。1敗もしていないJX-ENEOSから他のチームはどうやって2勝ないし、3勝を挙げられるのか?
そのイメージが全く沸かず、優勝戦線に異状は見当たらない。
上位6チームのエースや期待される選手のコメントとともに、8チームで繰り広げられるプレーオフ クォーターファイナルの組み合わせを見ていこう。
1位:JX-ENEOSサンフラワーズ vs 8位:羽田ヴィッキーズ
第1戦/2月18日(土)15:00 鹿児島県・いちき串木野市総合体育館
第2戦/2月19日(日)15:00 鹿児島県総合体育センター体育館
第3戦/2月20日(月)18:00 鹿児島県総合体育センター体育館(開催されない場合あり)
■今シーズンの対戦成績:JX-ENEOS(2勝)羽田(0勝)
羽田が2次ラウンド下位リーグを4勝1敗で抜け出し、プレーオフスポット最後の枠を勝ち獲った。羽田にとっては悲願のプレーオフ初進出となる。勢いそのままに夢中で、女王にぶつかっていくだけだ。
待ち受けるJX-ENEOSの渡嘉敷選手は、「相手がどうこうではなく、しっかり自分たちが1次ラウンドでやってきたことをもう一回出していきたいです」と話す。JX-ENEOSのライバルは己自身である。
点差が開いたトヨタ自動車戦を終えた後、ホーバスヘッドコーチは「もし今日の試合が決勝戦だったら、いくら勝ってもうれしいか?」と選手たちを問い詰めた。「いや、うれしくないな」と思っていたのは渡嘉敷選手だけではない。
「常に決勝だと思って戦い、自分たちが勝ち続けている意味をみんなが分かっていけたら良いと思っています。ただ優勝できれば良いという考えでは無く、一人ひとりが成長しつつ、全勝して内容にこだわって戦っていきたいです」
JX-ENEOSの完全優勝まで、あと7勝である。
2位:トヨタ自動車アンテロープス vs 7位:トヨタ紡織サンシャインラビッツ
第1戦/2月18日(土)14:00 愛知県・スカイホール豊田
第2戦/2月19日(日)14:00 愛知県・スカイホール豊田
第3戦/2月20日(月)19:00 愛知県・スカイホール豊田(開催されない場合あり)
■今シーズンの対戦成績:トヨタ自動車(2勝)トヨタ紡織(0勝)
JX-ENEOSに大敗を喫した最終戦ではあったが、トヨタ自動車の水島沙紀選手は、「レイアップに行っても絶対にブロックされてしまうのは分かっていたので、オールジャパンの反省点を生かして、しっかり止まって打つことを意識していました」と対策を練って臨んでいた。確率は上がらなかったが、「シュートに行くことはできています。あとは決めきる力だけ」と少なからずきっかけを見出しており、自信を持てた試合ともなった。
「一戦一戦、目の前の試合を勝ち抜くことが大切です。JX-ENEOSとは勝ち上がっていけば最後に対戦するので、そこへ向けてやるべきことをしっかり出していきたいです」
7位のトヨタ紡織とは2度対戦しており、いずれも13点差をつけて勝利している。しかし、1次ラウンドのトヨタ紡織はシャンソン、デンソー、三菱電機の上位グループから勝ち星を挙げている。2次ラウンドでも下位リーグながら全勝で勝ち上がっているだけに、何が起こるかは分からない。
後編に続く
文・写真 泉 誠一