山梨クィーンビーズは2013-14シーズン終了後、メインスポンサーの撤退とともに練習環境がなくなった。当時、芹澤 薫代表理事は「やはりWリーグで戦うためにも相応の環境が無いと、なかなか選手を獲得すること自体が困難になります。そのため一時的にWリーグから撤退しますが、これから再建の道を探るための期間となります」と話し、関東実業団リーグへ主戦場を移した。その後の努力が実り、今では胸スポンサーについている日本航空学園の広い体育館での練習環境が整備され、3シーズンぶりにWリーグ復帰を果たす。
チームとともに、Wリーグの舞台に帰ってきた選手が2人いる。近内 瞳選手(元日立ハイテク)と藤井 美紀選手(元トヨタ自動車)だ。以前はプレイタイムをなかなか得られなかった2人だったが、山梨では主力としてコートを走り回っている。
Wリーグから撤退した翌シーズンは8人からスタート。その時に山梨にやって来たのが近内 瞳選手であり、Wリーグでプレイするのは実に10年ぶりとなる。
がんばってダメならば、これで終わりにしよう……
ーー 高校卒業後、2005-06シーズンから2年間、日立ハイテククーガーズに在籍。その後、大阪人間科学大学に進学。当時の経緯を教えてください。
ひたちなか市出身であり、地域密着を掲げる日立ハイテクに入って少しでも地元に貢献したいという思いと声をかけてくださったこともあり、入団を決めました。
しかし、なかなか実力が伴わず、2年で戦力外通告。その後、半年間はマネージャーとしてチームに残らせてもらったけど、まだ自分が動けるのに見ているだけというのがすごく辛かった。皆さんのことが好きだし、日立ハイテクも好きだった。マネージャー業も楽しかったですが、体が動くわけだから、まだバスケットを続けたい。そう思っていたら、大阪人間科学大学への道が開けました。
プレイタイムは少なかったですが、4年次にはキャプテンをさせていただきインカレ準優勝(2011年)。その後のオールジャパン(2012年)でも、新潟(アルビレックスBBラビッツ)に勝ってベスト8という結果を残せたのは良い思い出です。
(インタビューを行った11月12日@ひたちなか市大会の会場で一緒だったトヨタ自動車アンテロープスの)栗原(三佳選手)は同じ学年で、鬼頭(真由美選手)が一つ下、近藤(楓選手)は二つ下、他にもいろんなチームで人科(大阪人間科学大学)の選手が活躍していてすごくうれしいです。
ーー 大学卒業後、東海実業団リーグのイカイでプレイした時はどんな状況でしたか?
そんなに力を入れているわけではなかったので、もうバスケットを辞めようかなと思っていました。その時(2014年)に山梨が新たにチームを立ち上げていたので、「最後にもう一回自分を試したい。がんばってダメならば、これで終わりにしよう」と思いました。関東実業団リーグでプレイしながら、Wリーグ復帰を目指して8人からスタート。全国大会(全日本実業団バスケットボール選手権大会)では2年連続ベスト4入り。(2015年全日本社会人バスケットボール選手権大会で3位となり)オールジャパンにも出場でき、新潟(〇78-75)を破ったのですが、次のベスト16(3回戦)でアイシンAW(●47-89)にボコボコにされました。
ーー Wリーグに帰ってきた今シーズン、日立ハイテク時代よりもプレイタイムが多く、環境がガラリと変わった今の感想は?
一回バスケットができなくなった経験があり、今は普通に仕事しながらなので大変な部分もありますが、バスケットができることが私にとってはすごい幸せですし、うれしいです。10年ぶりにWリーグの舞台に帰ってこられたというのが何よりもうれしい。プレイタイムがあることも私にとってはうれしいことです。まだまだ自信もないですが、プレイしていてきついということも感じず、何よりも楽しいんです。これまでがんばってきて良かったという気持ちが強いです。
ーー 高卒後に日立ハイテクに入った時と、いろんな環境を見てWリーグに帰ってきた今では、バスケットの価値観の違いはありますか?
全然変わりましたし、大学に行って良かったと思っています。長渡 俊一先生のおかげで、今の自分のバスケットが作れていると思っています。もちろん日立ハイテクでの経験もすごい勉強になりました。大学に行って、また違うところからバスケットを見ることができたことは本当に良かったです。
もっともっと積み上げてまだまだうまくなっていきたい
ーー 2試合を見させてもらい、なかなか勝利には結びつきませんが、それでもディフェンスをがんばるチームという印象があります。
高さがない分、平面的なバスケットをすることがチームの方針です。そのためにも粘ってディフェンスしなければならない。リバウンドはどうしても高さがない分、獲られてしまうことが多く、みんなで何回も何回も飛ばなければいけない。高さも当たりも技術も他のチームに比べれば全然違いますが、そこは気持ちで勝負ですかね。
ーー 厳しい試合が続き、チームは16人中5人とルーキーが多いですが、チームにとってはどんなシーズンにしたいですか?
勝ちたい気持ちはあるんですが、なかなか結果がついてこなくて…。そんな中でも負け癖がついてはいけないと思っています。立ち上げたばかりのまだまだ若いチームなので、これから少しずつ結果を残せて行けたら良い。その土台になれるような今シーズンにしていきたいです。
ーー Wリーグに復帰した近内選手自身の今シーズンの目標は?
いろいろ試合で試すことで、できることや通用しないことを感じることが多いです。それらを吸収しながら、私自身はWリーグの経験年数はまだ浅いので、もっともっと積み上げて、まだまだうまくなっていきたいという気持ちが強いです。
ーー 若いチームの中での役割は?
私の役割かぁ……。いろんなところでバスケットをしてきたので、そこで得たものを伝えることも一つの役割です。でも、言葉で伝えるのは下手なので、体で表現する方が強いですね。「背中を見てくれ」というようなカッコイイことは言えないですけど(笑)。一緒に楽しさを分かち合ってがんばろうという気持ちで、引っ張っていきたいです。
12月はホームタウンである山梨開催が多い。初勝利へ向け、帰ってきたクィーンビーズを会場に応援しに行っていただきたい!
文/写真・泉 誠一