「どうしても上背がないので、ハードなディフェンスからブレイクで得点というのは社会人リーグでもやりたいことで、それこそ3×3で代表に入った高田(静)とか、世代の代表クラスの子たち相手にそれをどこまでやれるか、ファウルになっても抜かれてもいいからやるということ、そこがコンセプト。間合いを詰めてやり続けるということは、控えの子も含めてできたかなと思います。
社会人よりもフィジカルは強いし、サイズも全ポジション大きいし、たまにこういう舞台に帰ってくると私は『ああそうだよね、みんな大きいよね』って思い出すんですけど(笑)、選手たちは180センチが2枚も3枚もいるような状況を普段はなかなか体感できない。チームにとっては収穫の場ですね。でも、選手たちも結構楽しくやれてるので、本当に良い経験です。Wリーグの選手相手にドライブ1本抜けただけでも、1クォーターだけ競ることができても自信になる。こういう機会は楽しくて、前のめりでやってます」
同じ企業チームでも、Wリーグであれば選手は実質的にバスケットを職業とし、それに専念できる一方で、社会人リーグのチームは社業があることが前提となり、環境面は大きく異なる。今は選手たちが両立のために努力している姿を間近で見ている木林HCも、現役時代の自身は恵まれた環境にいたということを実感する。
「ENEOSもそうですけど、Wリーグの上位のチームはバスケットに特化した環境を作ってもらってる。それは現役のときもわかってたつもりでしたけど、いざ社会人のカテゴリーに来てみると、仕事をしてから練習で、自主練やシューティングが1日何時間もできるわけではない。選手たちの頑張る意欲はWリーグの子たちと変わらないんですけど、次の日も朝から仕事があって、しっかり休む時間も必要なので、『シューティングしたいのはわかるけど、早く帰って寝なさい』って私が追い立ててます(笑)。
山形銀行も決して環境が悪いわけではないんですけど、遠征の交通手段とかホテルとか食事とかを考えると、ENEOSにいるときが恵まれてただけであって、一般のチームは山形銀行みたいな環境が普通というか、うちも企業チームではあるので、クラブチームで頑張ってるところに比べたらまだ良いほうかもしれない。環境は言い訳にならないと思ってます」
全てが満たされる環境ではなくても、可能な限り高いレベルを追求するのが指揮官の仕事。木林HCも、選手たちの置かれた状況に配慮しながらレベルアップを要求しているが、それはある意味、選手たちのマインドを買っているからでもある。
「選手たちがそれをハードルが高いと思うのかどうかはわからないですけど、私としては今の環境の中でできるベストを求めてて、朝から晩まで自由に体育館を使えるWリーグのチームと同じことを求めてるつもりはないです。でも、山形銀行に来たときは、Wリーグの子たちよりよっぽどすごいと思いましたね。午後3時半に仕事が終わって、5時から7時まで本気で練習して、その後にトレーニングや自主練をして、翌朝8時にまた出勤してる中で、社会人日本一になりたい、勝ちたいっていう熱量を保ってることがすごい。毎日バスケットしかしてなかった身からすると、よくやってるなって感心しますね。尊敬してます。『時間の使い方を考えなさい』とか『もう少し要領良くできるよね』って小言は言ってますけど(笑)」