ポイントガードとして福岡第一を冬の王座に牽引した河村勇輝のスピードと卓越したパスセンスに驚かされたバスケットファンは少なくないだろう。が、さらに驚かされるのは試合後、プレーを振り返る彼の冷静な言葉だ。そういえば確か昨年のウインターカップでも的確に言葉を選び、自分の考えを述べる河村に「なんと1年生らしからぬ!」と、驚いた覚えがある。同時にそんな河村を見ながら「自分の頭で考え、それを表現できるのもポイントガードの資質の1つ」と、語っていた井手口孝コーチの笑顔も思い出した。あれから1年、河村の成長は著しい。
「去年のウインターカップの準決勝で(福岡大附属)大濠さんに敗れたあと、自分たちに足りなかったものは何かということをみんなで考えました。それで大濠さんとうちが違っていたのはファウルのところとシュート確率だと再確認したんです。その反省を踏まえ、新チームになってからはシュート練習に力を入れてきました」
まずは朝45分間シュート練習し、夕方いつもどおりハードな練習を終えるといったん寮に戻り夕食を摂ったあと再び体育館へ。「そこでまた1時間ぐらいシュート練習をします。同じシュート練習でも1年のときは集中できない部分もあったんですが、大濠さんに負けてからは絶対やってやるという気持ちが強くなって、本当にすごく集中してできるようになったと思います」
3点差の悔しい敗戦から自分自身の課題も見つかった。「課題と言ってもまだ足りないものばかりなんですけど、1番はやはりシュート力。あの試合で自分は10本3ポイントを打って1本も決めることができませんでした。だからこの1年は本当に気合いを入れてシュート練習をしてきたし、今日(決勝戦)2本決められたのは、少しは練習の成果があったのかなと思っています」
夏にU18日本代表メンバーとしてFIBAアジア選手権の舞台を踏んだ経験も大きかったという。「アジアではガードの身長が高いのでそこは勉強になりました。スピードでは通用する部分が結構多かったですが、それだけではダメ。もっと緩急を付けて1対1で振り切る力とか、相手がフェイスガードしてきたときもフラストレーションを溜めず、自分が仕掛けていく力とか、それプラス外のシュート、ミドルレンジももっと練習していかなければいけないと感じました。そうしないと相手が止めやすい選手になってしまうので。アジア選手権で学んだことは自分だけではなく、これからもチームに還元していきたいと思っています」