インターハイを制した福岡大学附属大濠とその決勝で1点差に泣いた明成。夏の王者を競った2校が冬の決勝戦でも顔を合わせることとなった。
全国大会の常連校でありながらウインターカップの優勝からは遠ざかっていた福岡大学附属大濠にとって今年は24年ぶりの悲願を叶えるチャンス。2013年、2014年の決勝ではいずれも明成に敗れていることもあり、『3度目の正直』を目指す思いはことのほか強かったはずだ。今年のチームの強みはバランスの良い布陣。フィジカルに強みが増した200cmの#15井上宗一郎を柱に#4永野聖汰、#13中田嵩基、#12土家大輝らガード陣が高確率で外角シュートを沈める。1年生ながら得点源の1人としてスタメンに名を連ねる#14横地聖真の存在も頼もしいと言えるだろう。が、一方の明成もチームバランスでは負けていない。大黒柱の#8八村阿蓮(196cm)はこの1年で着実な成長を見せ、インサイドのみならず精度の高い外角シュートでも得点を量産する。加えて#12本間紗斗(191cm)、#6相原アレクサンダー学(189cm)、2年生シューター#10田中裕也と内外に安定した力を持つ選手が揃い、#5塚本舞生の堅実なゲームメイクで2年ぶり王座奪回を目指してきた。両者持ち味は違えど戦力は甲乙つけがたく、勝敗の行方を占うのが難しい頂上決戦となった。
ところが予想に反し、八村の3ポイントシュートで始まった試合は1Q中盤からやや一方的な展開となる。明成のゾーンディフェンスを攻めあぐねる福岡大学附属大濠とは対照的に明成の外角シュートはおもしろいようにリングに吸い込まれ、1Q終了時には26-16と二桁差がつく。2Q、巻き返しを狙う福岡大学附属大濠はゾーンを仕掛けるが、明成は得意の速いパス回しからチャンスを作り着実に加点。49-33とさらにリード広げ前半を折り返した。後半に入っても試合の流れは明成に傾いたまま。3Q開始5分まで1点に抑えられた福岡大学附属大濠との差はついに22点までに広がり、気の早いファンからは明成の勝利を確信する声が聞こえたほどだった。
しかし、福岡大学附属大濠の反撃はここから始まる。土家の連続3ポイントシュートを皮切りに、#5上塚亮河、中田の3ポイントシュートで明成の背中を猛追。3Qを終えるときには22点のビハインドは9点に縮まり、最後の10分に望み託す展開となった。こうなると俄然場内の熱気も増してくる。4Q残り3分を切り、上塚がゴール下に回り込んで67点目のシュートを決めると観客席が大きくどよめいた。70-67、その差は僅か3点。だが、ここまで追い詰められても明成があわてることはなかった。タイムアウトで一呼吸置くと、再び福岡大学附属大濠を突き離しにかかる。試合終了のブザーが鳴ったとき、電光掲示板の数字は79-72。同点を狙った福岡大学附属大濠のシュートは何度もリングに嫌われ、あと一歩まで迫った明成の背中を最後まで捕えることはできなかった。
昨年は1回戦敗退という屈辱を味わった明成は1年かけて頂点を極めるチームに成長した。さらに言えば今大会中も戦いながら強くなっていった感がある。苦境に立っても自分たちを信じて揺るがなかった明成の強さ、そして、最後まであきらめることなくその明成を追い詰めた福岡大学附属大濠の粘り、両者ともに力を尽くした決勝にふさわしい一戦だった。
文・松原貴実 写真/キャプション・吉田宗彦