第70回全日本大学バスケットボール選手権男子決勝。観客が見上げる電光掲示版の数字は東海大88、専修大70。タイムアップのブザーと同時に手にしたウイニングボールを高く放り上げたのはキャプテン内田旦人だった。満面の笑み、そして、そのあとの涙。「Bチームのみんながコートになだれこんできたとき、ああ、自分たちはこいつらも含め全員の力で優勝できたんだと思って、一気に熱いものがこみあげてきました」
内田にとって大学最後の年はこれまでになく自分自身と向き合い、同時にチームと向き合う1年だった。大学バスケットボール界をリードする常勝軍団と言われながらリーグ戦9位、インカレ5位に沈んだ昨シーズン。「チームが崩れていったときに立て直せないまま終わってしまったという思いがあって、このままじゃダメだ、キャプテンになったからにはもう1度強い東海大を取り戻したいという気持ちでいっぱいでした」
4年生だけでミーティングを行ったのはシーズンが始まる前。「そこで新シーズンの東海大はチームとしてどうあるべきか、勝つべきチームはどういうチームなのかについてとことん話し合ったんです。みんなの思いが同じなのを確認して、最後はそれをブラすことなく1年間貫こうと言いました」
だが、『ブレない気持ち』を貫くことはそう容易いことではない。とりわけ大倉颯太、八村阿蓮を筆頭に有力な新人たちが入ってきた今年はチームの中にはさまざまな変動があった。スタメンだった自分や同じ4年生の鶴田美勇士が控えに回ることになったのもその1つだ。
4年生としてのプライドが傷ついたり、人知れず葛藤したことはなかったのだろうか。
「プライドはもちろんあります。けど、力がある1年生が入ってきたとき、これで自分たちのプレータイムは減るだろうなと覚悟しました。そこからのスタートです」
思い浮かべていたのは、自分が東海大に入学したときの4年生たちの姿だ。「キャプテンはベンドラメ礼生さん(サンロッカーズ渋谷)だったんですが、礼生さんはどんなときでも自分たちに伸び伸びプレーさせてくれました。4年生としては我慢することも多かったと思いますが、それでも僕たち1年生が自由にプレーできる環境を作ってくれたんです。だから、チームの雰囲気も良く、自然に1つになっていったような気がします。今年自分が目指したのはあのときみたいなチーム。礼生さんみたいなキャプテンになりたいと思いました」