本日11月25日に準決勝を迎える女子インカレ。準決勝を指揮するヘッドコーチの対戦も見どころのひとつ。どちらのカードも「世界を知るユニバ代表ヘッドコーチ」vs「Wリーグの経験を生かした新米ヘッドコーチ」対決となった。
白鴎大学の佐藤 智信ヘッドコーチは2009年、2011年のユニバーシアードで2度のヘッドコーチを任される。2015年はチームリーダーとなって世界ベスト4に導いた。同じく2015年大会でアシスタントコーチだった東京医療保健大学の恩塚 亨ヘッドコーチは、来年のユニバーシアード女子日本代表ヘッドコーチであり、世界に挑む。さらに女子日本代表のテクニカルスタッフを長年務め、今年のリオデジャネイロオリンピックでもその力を発揮してきた。
対する早稲田大学の藤生 喜代美ヘッドコーチと大阪人間科学大学の稲本 聡子ヘッドコーチはともにWリーグ出身であり、どちらも今年がヘッドコーチに就任したばかり。トップリーグでしのぎを削り合ってきた経験を生かし、しっかりと結果を残している。
準決勝 11月25日(金)11:40
早稲田大学(関東1位) vs 東京医療保健大学(関東3位)
早稲田大学「ノビノビとプレイして勢いづけるルーキーの存在」
昨年は優勝校の筑波大学に敗れた。2連覇を目指す前回大会だったが、準々決勝と早い段階で優勝争いから弾き出される。その悔しい思いは、同じインカレの舞台でしか返せない。長く待ち焦がれた1年を経て、関西学院大学を相手に83-64で勝利し、一つ目の壁を乗り越えた。藤生 喜代美ヘッドコーチも、選手とともに昨年敗れた準々決勝の壁を「気にしていた」そうだ。
一方、その悔しさを知らない1年生の中田 珠未選手はノビノビとプレイしている。関西学院大学戦では、チーム最多となる18点を挙げた。「すごい先輩たちと日々の練習から相手をしてもらっているので、毎日のように刺激をもらっています」と話す中田選手は、コート上での存在感が日に日に増している。藤生ヘッドコーチは「思い切ってプレイさせることが一番」と考えており、中田選手も「良い意味で自分勝手にできてます」と臆することなく実力を発揮。その背景には先輩たちの存在も大きい。「どんなプレイをしても絶対に先輩が合わせてくれるし、声をかけてくれる安心感の中でノビノビ楽しくバスケットができています」と自然体で闘う中田選手がチームを勢いづける。
初めての大舞台に対し、「インカレは負けたら終わり。それ以上に4年生のためにも勝ちたいという思いが、どこのチームにもあると思います。同じように4年生も、最後の大会に勝ちたいという気持ちを強く持って臨んでいるわけですから、下級生である自分たちがどれだけその気持ちに乗れるかが大事です」と気を引き締めて臨む準決勝。その東京医療保健大学戦へ向け、藤生ヘッドコーチは「常に立ちふさがってくる相手。そこを上回らなければ日本一はない」と話しており、壁を乗り越えて2年ぶりの日本一へ向かう。
東京医療保健大学「原石を磨き、能力の差を補うタイムシェア」
2年前に3位となった東京医療保健大学だが、昨年は愛知学泉大学に準々決勝で敗れている。今年も同じ相手との準々決勝となったが、75-67で接戦をものにし、リベンジを果たした。
連戦が続くトーナメント戦において、頻繁に選手交代を行いながらフレッシュな戦力を投入する東京医療保健大学のスタイルは強みと言える。恩塚 亨ヘッドコーチは、「うちの選手たちは疲れてしまうとパフォーマンスが出せません。常に100%でプレイしなければ、選手個々は能力の差があるのでなかなか勝てないです。実際に相手と1on1で勝てるのは岡田(英里)くらいです」と意図は違うところにあり、シーズンを通して全うしてきたことだ。
高校時代、全国大会出場経験がない津村 ゆり子選手は1年次、「代々木第二体育館のような場所でバスケットができることが本当にうれしくて、夢のような感じでした」と振り返る。恩塚ヘッドコーチは「能力は高いですが、すぐに挫けてしまいます。しっかり気持ちを切り替えて次のプレイができるようになると本物になると思って、『次、次』と言い続けています」と期待し、津村選手を始めとした多くの原石を磨き続けてきた。
3年生となった津村選手は、「チームの一員として勝つためにやってます」と今では全国の舞台にも慣れ、勝負を左右するキーパーソンの一人となった。東京医療保健大学に突出した選手はいない。「だからこそ、練習してきたことをしっかりチーム全員で表現して闘うのが我々の強み」と言う恩塚ヘッドコーチ。
勝利に向かってこだわっているのは、「始めの3本を全力で走ること」「リバウンドの徹底」「厚く守ること」。東京医療保健大学のスタイルを貫き、それを強みとして初優勝を目指す。
第68回全日本大学バスケットボール選手権大会
男女決勝戦はBSフジテレビにて生中継
文/写真・泉 誠一