ジョージ・ワシントン大学に進んだばかりの1年生のとき、フリーペーパー化する前の弊誌Vol.5「待ってろ!世界!!」に掲載すべく、ワシントンD.C.を訪れた。あれから3年──4年生となった渡邊雄太選手はチームの中心におり、頼れるキャプテンとして成長した姿を見せている。
現地1月31日は、愛媛オレンジバイキングスのリチャード・グレスマンヘッドコーチが、昨シーズンまでアシスタントコーチ(詳細は「二人の境遇が異なる新米ヘッドコーチの挑戦」にて)として活躍していたドゥケイン大学をホームに迎えた。2018年最初の試合となった1月3日にも対戦しており、52-69でジョージ・ワシントン大学は敗れている。その試合を皮切りに4連敗。ジョージ・メイソン大学戦に勝利したが、その後も3連敗と苦しい局面にいるのが現状だ。
悪い流れを断ち切るため、オフェンスの修正に着手
「ここ3〜4試合は全然ボールが回らず、みんなも試合をしながらストレスがたまっていた部分があったと思います」
渡邊選手が言うように、確かに勝てない日が続くジョージ・ワシントン大学はオフェンスが重く、思うように攻められずにいた。そこでモーリス・ジョセフヘッドコーチは早いペースで攻められるようにテコ入れし、この試合に臨んだ。
「今日はボールも足もよく動いていており、前半はファストブレイクでの得点もあって、良い入り方はできたと思います」と渡邊選手が手応えを感じているとおり、36-33と20分間の前半をリードして折り返す。どちらに転んでもおかしくはない状況の中、ジョージ・ワシントン大学はタイトなディフェンスで流れを呼び込む。終盤、渡邊選手が3Pシュートを決め、次のオフェンスではファウルをもらって3本のフリースローをしっかり決めた。その6点によってリードを奪い、勢いに乗って後半に向かう。
たった3点のリードはすぐさま奪い返されてしまったが、渡邊選手のダンクで49-49と振り出しに戻す。次の瞬間、ディフェンスに戻りながら利き腕である左手を何度も振り上げると、ホームの観客が声を上げてチームの背中を押す。だがその直後、マッチアップしていたタリン・スミス選手に3Pシュートを許し、再度リードしたのはドゥケイン大学の方だった。
定評のあるディフェンスと諦めない3Pシュートも及ばず4連敗
ジョージ・ワシントン大学での渡邊選手は、オフェンスの起点となるポイントガードのマークを任される機会が多い。ドゥケイン大学戦でマッチアップしたスミス選手とルネ・カナディ選手はいずれも188cmほど。206cmある渡邊選手との差は18cmに及ぶ。シュートを打たれてもブロックできるだけのアドバンテージはあった。スピードでも負けることなく、「1on1では簡単にやられなくなってきた」と実感しているとともに、周囲からもディフェンスの評価は高い。しかし、この日は「ボールスクリーンをかけられたところでズラされてやられてしまいました」と反省する場面も少なくはなかった。ドゥケイン大学のガード陣は、渡邊選手のブロックより速いリリースでネットを揺らしていく。また、体格で上回るスクリーナーに対処できずに失点を許し、後半は追いかける時間帯が続いた。
残り12.5秒、諦めずに放った渡邊選手が3Pシュートを決め、71-73。2点を追うジョージ・ワシントン大学はファウルゲームに突入。この日、ドゥケイン大学はフリースローをことごとく外し、52.6%の低確率なのは好材料だった。案の定、1本しか決められずに71-74、残り時間は11秒もある。3Pシュートで同点となるシチュエーションだったが、そこは全て対応されてしまい、シューターの渡邊選手へのマークは誰よりも厳しい。その隙を突き、テリー・ノーランJr.選手が確実にゴール下のシュートを決め、73-74と1点差に迫る。残り時間は5.1秒。
再びファウルゲームで時間を止めることを念頭に置きつつ、あわよくばターンオーバーを狙いダブルチームに行った。観客席を見上げるとグルグルと腕を回して、トラベリングをアピール。目の前で起きていた状況は、確かにスキップしていたように見えたが、レフェリーはファウルをコール。ケロン・タイラー選手へのフリースローが与えられた。
残り1.4秒。ここでもフリースローの精度を欠いたドゥケイン大学だったが、落としたのは2本目。リングに弾かれるとともに時計が流れていく。ゲームハイとなる23点を挙げたパトリック・スティーブス選手がリバウンドを獲り、敵陣から慌てて超ロングシュートを試みる。しかし、ボールの軌道は低く、リングに届くことなく無情なブザーが鳴り響いた。
「相手は決めるべきところでしっかり決め、自分たちが決めきることができなかったのが敗因です」
73-75とあと一歩及ばず、再び4連敗を喫した。
日本代表と同じリバウンドの課題に直面
オフェンスを修正したことで、「少しは成長が見られました」と渡邊選手は前向きに捉えている。一方で、負け続けてきたここ1ヶ月のゲームを見ている限り、修正すべきはディフェンスではないかと伺ってみた。すると渡邊選手は、それ以上に「リバウンドを獲られたあと、今日の試合でも全てのセカンドショットが決められていました」と昨シーズンまでと比較して身長で劣る分、リバウンドを大きな課題として挙げた。
「自分たちはサイズがないので、5人全員でリバウンドを意識して飛び込まなければいけないです。インサイドだけに任せてしまっては、相手の方がデカいのできついですし、せっかく良いディフェンスをしてもリバウンドを獲られてまた守り直すとなると精神的にもきつい。しっかり1回で抑えきることが大事だと思っています」
日本代表と同じ課題に直面している中で、渡邊選手のリバウンド平均6.3本はチームトップを誇る。「インサイド陣は一生懸命ボックスアウトをしてがんばってくれている分、サイズのあるウイングの僕がしっかり飛び込んで、ボールを拾っていかないといけないです」とさらなる積極性を見せるとともに、チーム全体としてその数字を上向かせる必要性を説いていた。
ディフェンスに関しても、「今日のようなうまいガードは、少しでもスペースを与えてしまうと絶対に決めてきます。スクリーンをされたときにいかにファイトオーバーを早くして、相手の正面に戻れるかどうかが大事になります。チーム全体としても、スクリーンに対するディフェンスを上達させることが課題です」とまだまだ修正点は多い。
次戦、現地2月3日はデヴィッドソン大学をホームに迎える。前回の対戦は1月10日、渡邊選手は12点を挙げたが、45-72と27点差をつけられ大敗を喫した。
「前回のデヴィッドソン戦は相手がどうこうというよりも完全に自滅してしまい、大きく点差を引き離されてしまいました。おそらく前回同様、次の試合も僕がフォワードのエース(ペイトン・アルドリッジ選手)にマッチアップすると思います。今はほとんどガードとマッチアップしていて、なかなか大きな相手をマークすることはありません。前回対戦した経験とともに、しっかり映像を見て対策しなければならないですし、僕が抑えられるかどうかがカギになると思っています。自分の役割をこなして、勝利できるようにがんばります」
このデヴィッドソン大学戦の模様は2月6日(火)17:00よりJ SPORTS2にて放送される。また、ジョージ・ワシントン大学戦の多くはアトランティック10カンファレンスで生中継され、早朝ではあるが日本でも見ることができる。RAISEHIGH TVではハイライト映像も用意されているので、NBAに近い存在である渡邊選手のラストシーズンをぜひ多くの方に観ていただきたい。
文・写真 泉 誠一