第52回関東大学女子バスケットボール選手権大会の準々決勝進出を懸けた4回戦(ベスト16)で、昨シーズンのインカレ準優勝校の拓殖大学を93-90で破ったのが山梨学院大学である。関東大学リーグでは2部Aに所属するチームがアップセットしたことに驚かされた。準々決勝では同じ2部Aの順天堂大学を81-69で下し、見事に4強入りを決めた。
日替わりヒロインが活躍し、拓殖大学にアップセット
拓殖大学戦は57本:48本とリバウンドで上回ったことで、勝利を呼び込んでいる。21得点/11リバウンドのWダブルの活躍をしたのが丸由梨乃選手だ。「後半はインサイドから得点することができていました。そのおかげで外が空き、幅広いシュートの確率が良かったです」とオフェンスがうまく回った。その起点となったのがディフェンスであり、しっかりとリバウンドが獲れていたからである。「細かい部分を徹底できたことが勝利につながったのかな」と丸選手も手応えを感じることができた。
しかし、続く順天堂大学戦はリバウンドで苦しむ。「上位に行くことが自分たちにとってははじめてなので、拓殖大学に勝ったことですこし気の緩みがあり、リバウンドなど細かい部分でやられてしまっていました」と、拓殖大学では徹底できていた細かい部分が疎かになり、ピンチを招く。第4クォーターに入るとようやくエンジンがかかり、26得点を挙げた髙木志歩選手がチームを救ってくれた。
トーナメントでは日替わりヒロインが活躍した山梨学院大学。拓殖大学戦は丸選手の他にも、3Pシュート王になった山本由真選手が29点を挙げている。準々決勝の順天堂大学戦は先に挙げた髙木選手が活躍した。1勝も挙げられなかった決勝リーグではあったが、それまで形を潜めていた4年生の後藤沙奈選手が、最後の白鴎大学戦で21点とようやく本来の姿を取り戻す。1年生の浅野瑛菜選手もコンスタントに二桁得点をマークし、新人賞を受賞した。
山梨学院大学の主力となるのは2・3年生たちである。今シーズン、昇格するチャンスをつかめば、今年の主力たちが1部でその力を試すことができる。3年生の丸選手も「1部で戦いたいという気持ちはすごくあります。ここで昇格できなければ、1部で戦うこともできません。今シーズンに全てを賭けており、全力で、全員でがんばっていきたいです」とチャンスをつかみたいところだ。勝ち星こそ挙げられなかったが、トーナメントでは1部のトップチームと対戦でき、「2部Aブロックの中で唯一、決勝リーグに進んで1部のチームと戦えたことは良い経験になりました」とメリットを感じている。
しかし、“春の山梨学院大学”という異名もある。4年前、トーナメントを優勝したが、その年は順天堂大学に阻まれて昇格できなかった。そのことに触れると、丸選手は「やっぱり波があります。その波をなくすことが一番の課題点です。そのためにもディフェンスが大事ですし、オフェンスではミスを減らして確実に得点につながるプレーをしていきたいです」と安定した戦いが求められる。
自信あるオフェンス力、課題点はディフェンス
山梨学院大学は内海知秀ヘッドコーチ(現レバンガ北海道アドバイザリーコーチ)のアシスタントコーチとして、アテネとリオオリンピックに出場した梅嵜英毅ヘッドコーチが指揮を執る。「一人ひとりをよく見てくれていて、いろんな戦略であったり、よくNBAの話をされますがそれもすごく参考になっています。プレーの技術やスクリーンの対処法などさまざまな方法を教えてくれます」と丸選手が言うように、世界を知る梅嵜ヘッドコーチから学ぶことは多い。もう一人、WリーグOGの林五十美アシスタントコーチは、選手たちにとっては良きお姉さんである。
「私たちに近い存在でもあるので、一番相談しやすいですし、一番近くで見てくれているのでアドバイスも的確です。信頼できますし、一番支えてくれている存在です」
チームの特長として、「オフェンス力はあると思っています。課題となるディフェンス力を強化しそこを徹底できれば、1部に昇格できると思っています」と丸選手も自信を持っている。日替わりヒロインが出るほど選手層も厚い。昨年の新人戦は3位であり、まもなくはじまる今年も髙木選手や大澤 来彩選手、石川明日香選手らトーナメントで活躍した2年生と新人賞を獲った浅野選手がおり、期待値は高い。シードによりベスト16から出場する山梨学院大学の初戦は6月9日(土)。新人戦でも好成績を残し、成功体験を増やしていけば1部昇格へ向けた上昇気流が吹くはずだ。
文・写真 泉 誠一