本人にそれをぶつけてみると、「自分が今持っているものでは足りない」と即座に否定する。もちろんポイントガードができれば理想とも言うが、大学界のポイントガード陣と自身を比較したときに「ボールハンドリングも、スピードも、ディフェンス力も足りない」と言うのだ。
しかしわずかなズレを見つけて、そこにパスを出すセンス――決断力と実行力――は一朝一夕で身につくものではない。しかもそのズレを生み出しているのは彼自身の得点力であり、1対1である。
得意ではないというディフェンスも、彼が歩んできた上尾市立大石中や県立能代工業でその基礎を培われてきた。だからこそ今は間合いなどの「駆け引き」で補うことができている。ディフェンスのステップワークはフィジカルの強化とともに彼の課題だが、ディフェンスで駆け引きができるという感覚も将来的にはひとつの武器になるはずだ。
攻守において相手を翻弄し続ける盛實は、バスケットボールという競技そのものを楽しんでいるかのように見える。
「そう見てもらえるのは自分的にいいことです。やはりバスケットボールを楽しむことを前提にプレーしているので、そういう部分が見ている人に伝わっているのであればうれしいですね」
バスケットを楽しむ“バスケ小僧”が司令塔に立つ――いつかそんなシーンを見たい。そう思わせるのも盛實海翔の魅力の1つである。
全日本バスケットボール連盟
バスケットLIVEにて見逃し配信中
文・写真 三上太
1 2