第58回関東大学バスケットボール新人戦において、2部チームながら決勝まで勝ち上がり、快進撃を見せたのが日本体育大学である。決勝戦は、拓殖大学に61-64と惜しくも3点差で敗れた。「1部のチームはサイズがあります」と、体格差を感じていたのはキャプテンの土居光選手だ。それでも「走って、シュートを決められれば勝てる」と自信を持って臨み、準決勝では青山学院大学を100-89で破っている。
準決勝、決勝はホームコートで行われたことが少なからず追い風となり、「みんなシュートがよく入りましたね」と土居選手も驚いていた。多くの声援を受けながらも浮き足立つことなく、「自分たちのリズムでやることを一番意識していました」と冷静にゲームを組み立てる。一方で、「気持ちだけは受け身にならず、ガツガツ噛みついていこう」と、日本体育大学のニックネームである『ライオンズ』どおりに強気で向かっていった。
福岡第一高校時代から築き上げた阿吽の呼吸
土居選手はバム ジョナサン選手(1年)とともに、春のトーナメント(第67回関東大学バスケットボール選手権大会)から先発に抜擢されている。76-87で日本大学に敗れ、ベスト16で終わったが、新人戦に出場する1・2年生が多く活躍していた。
「自分、バム、遠藤(善/2年)やディクソン(ジュニア/2年)も試合に絡んでいましたからね。そこに(井手)拓実(1年)が入ったくらいと言っても、確かにおかしくないです。拓実には好きにやって良いし、楽しめと言いました。その結果、あいつもバンバンシュートを打っているし、それを決めてくれるのでナイスチームかなと思います」
土居選手、バム選手、井手選手は2年前、インターハイとウインターカップを制し、2冠を達成した福岡第一高校でも一緒だった。「ふとしたところで息が合いますね」というケミストリーは健在である。青山学院大学戦では、追い上げられる中でも土居選手とバム選手のコンビプレーで突き放した。
「自分がいてほしいところにバムがいて、そこにパスを出したらハイポストからのシュートを決めてくれました。自然と合っているので、それは高校から一緒にやってきた経験が生かされていると思います」
新人戦の会場には恩師であり、日本体育大学のOBでもある福岡第一高校の井手口孝ヘッドコーチの姿があった。試合後、恩師のもとへと駆け寄っていった土居選手はこんなアドバイスをもらったそうだ。
「シュートを打たれすぎ!ディフェンスがダメだ!と言われました……ごもっともです」
1部チームとのフィジカルの差、技術の差を痛感できた新人戦
昨年はリーグ編成の改正により10チームから12チームへと1部リーグが拡大したため、入替戦をすることなく上位2チームが昇格できた。大きなチャンスだったが、日本体育大学は1ゲーム差で届かず3位に終わり、悔し涙を流した。1年生だった土居選手は「試合にもっと絡みたかったし、俺を出せと思っていました」とやり場のない気持ちだけが残った。しかし全てが終わり、冷静さを取り戻すと、「信頼を練習で勝ち取れなかったことは自分が悪いので、そこを見直して今シーズンは臨んでいます」と悔しさをバネにし、今年こそ1部昇格へ向けてガツガツ噛みついている。
新人戦とはいえ、1部の青山学院大学に勝利し、拓殖大学とも対等に戦ったことは大きな自信になったはずだ。威勢の良い土居選手だったが、その点については冷静に現状を見つめている。
「このまま勢いに乗っていきたい気持ちもありますが、まだまだ学ぶことの方が多かったです。体つきと体の使い方はやっぱり1部チームの方がうまかったです。自分たちはまだまだなので、もっとフィジカルを強くしていきつつ、フットワークはもっと細かくうまく動けるようにしていきたいです」
その言葉の裏側には、1部昇格するだけではなく、その先で勝つことも視野に入れているようだった。
「チームとしての目標は必ず、絶対に1部に上がること!それはブレてないです。絶対に1部に上がって、インカレで良い試合をして、来年からずっと1部でも勝てるようにし、また日体大の時代を築いていきたいです」
選手たちの熱さと明るさが日本体育大学の長所である。「楽しむことを意識して戦おうというのがみんなとの共通理解です」と試合中も笑顔が見られ、余裕が感じられた。ホームということもあり、ベンチから溢れた多くのメンバーが盛り上げ、元気な日本体育大学が帰ってきた。あとは結果を残すのみ。輝かしい歴史はもう過去のことであり、「プレッシャーには捉えていない」。それ以上に「今すぐにでも1部に上げてやるっ、という気持ちが強いです」。
新人戦では法政大学が6位、順天堂大学が8位と2部リーグ勢の活躍も目立った。しかし、トーナメントでは、昇格したばかりの中央大学を含め、8強に残ったのはいずれも1部チームだけだった。昇格への切符はたった2枚しかない。今年は入替戦も復活する。目標を達成するためにも、獅子奮迅の活躍が不可欠である。
文・写真 泉 誠一