第58回関東大学バスケットボール新人戦を制したのは拓殖大学だった。弊誌Vol.19の表紙を飾った大倉颯太選手、八村阿蓮選手、伊藤領選手、坂本聖芽選手ら東海大学のルーキーたちは揃って活躍をしたが、準決勝で拓殖大学に破れて3位に終わる。
第67回関東大学バスケットボール選手権大会(トーナメント)でロスター入りした1年生は、大倉選手と190cmの佐土原遼選手(東海大相模高校)のみ。「ずっと一緒に戦いたかったメンバーとやっと試合ができました」と大倉選手は同期たちと臨む新人戦を喜んでいた。しかし、いくら有望な1年生を集めても簡単に勝てないことは歴史が物語っている。
2003年、東海大学は竹内譲次選手(アルバルク東京)、石崎巧選手(琉球ゴールデンキングス)、内海慎吾選手(京都ハンナリーズ)、井上聡人選手(元東京サンレーヴスなど)、阿部佑宇選手(元パナソニックトライアンズなど)と今年同様に超高校級であり、その後のトップリーグでも活躍する選手たちが1年生から主力として活躍した。当時、いつ日本一になるかがもっぱらの話題だったことを思い出す。しかし、インカレで初優勝を飾ったのは彼らが3年生になったときだった。2度の新人戦はいずれも準優勝。今年の新人戦も表紙を飾った4人に加え、トーナメントから活躍する佐土原選手の5人を擁しながらも優勝には届かなかった。
潰さなければいけない選手の一人
「間違いなく勝ちゲームだったというのが率直な気持ちです。準備してきたことも間違ってはいなかったです。みんなすごくがんばったのですが、逆転できるチャンスがあったのに、そこで自分が責任を果たせなかったのが敗因です」
準決勝の拓殖大学に破れたあと、早くもエースとしての自覚が見られるコメントをしていたのが大倉選手である。
拓殖大学の岡田侑大選手(21点)&ゲイ ドゥドゥ選手(32点)のコンビを乗せてしまい、68-74で敗れた。岡田選手にマッチアップしたのは同じ2年生の西田優大選手が買って出た。まだ、エースを止めることを託されるまでの信頼を勝ち得ていない大倉選手だったが、「それは勝つためには必要なことです」と自分の役割に徹する。「自分が他の選手をマークしながらも、得点源の二人を守りきることをできなかったことが、(岡田選手と直接)マッチアップすること以上に悔しいですし、チームの敗因につながってしまいました」と肩を落とした。
ディフェンスのローテーションなどにより、岡田選手とマッチアップする機会もあった。高校時代から数え、これが4度目の対戦になる。
「侑大さんは上手いし、勝負どころで決めてくることは分かっていても止められなかったです。前半は6点に抑えられ、準備してきたことが成功していました。逆にそこでもっと引き離すべきでした。侑大さんとドゥドゥの得点は分かっていた分、他の選手の点数がいらなかったです。それが最後に響いたなと思います」
大学生として、岡田選手との最初の戦いは悔しい結果に終わった。「スコアに関してはトッププレーヤーですし、勢いに乗らせてしまうとこういう結果になってしまいます。もっと練習をして、本当に潰さなければいけない選手の一人だと思っています」と闘志をメラメラと燃やしており、これからの対決が楽しみだ。
ソリッドディフェンスを徹底し、秋にリベンジ
大学バスケの4つある大会(トーナメント/新人戦/リーグ戦/インカレ)のうち、早くも半分が終わった。東海大学はトーナメント5位、新人戦3位。大倉選手の個人成績はトーナメント(平均14:39出場、5.5点、2.3リバウンド、1.8アシスト)、新人戦(平均32:17出場、17点、4.3リバウンド、4.5アシスト)。プレータイムが伸びれば、自ずとスタッツを残せることは証明できた。
(※いずれもスタッツ集計がされた4試合のみで算出)
上級生もいたトーナメントではフィジカルコンタクトの差などで挫折を味わったそうだ。一方、自信を持って臨んだ新人戦だったが、悔しい結果に終わっている。しかし、「いつまでも壁にぶつからないようではダメです」とこの敗戦を前向きに捉えていた。
「しっかりアジャストしきれなかったのが東海大の今の弱みです。どんな相手でも勝ち切る東海大じゃなければダメだと感じています」
チームとしても、大倉選手自身としても取り組むべき課題はディフェンスである。「オフェンス重視になってしまったところもありましたが、スタッフも選手も全員がディフェンスに重点を置き、常に声を掛け合っています。ディフェンスから流れを作るチームなので、絶対にそこはプラスにしていきたいです」。東海大学が取り組むソリッドディフェンスは、Bリーグチャンピオンになったアルバルク東京のパヴィチェヴィッチヘッドコーチから伝授されたものである。オフェンス以上に選手同士の阿吽の呼吸が求められ、時間がかかるのも致し方ない。新人戦の会場にはパヴィチェヴィッチヘッドコーチの姿もあり、スタンド席で東海大学の陸川章ヘッドコーチと並んで座っていた。ステップアップするためのヒントを得ているようでもあり、精度を高めてリベンジに挑む。
今シーズンの行方を占う春の2大会が終わり、そこで浮き彫りになった課題を克服する夏がやってくる。本格的なバスケシーズンを迎える秋のリーグ戦では、新人戦の経験を糧とした1・2年生がチームの戦力となって戻ってくることを期待している。それほど今後が楽しみな選手が多かった。
今後、BリーグやNBAなど大きな舞台で活躍する選手に育ってもらうためにも、まずはバスケットを楽しむことが先決である。中学時代から脚光を浴びてきた大倉選手は、あの頃と変わらぬ情熱とバスケ愛をひしひしと感じる。テーブルオフィシャルに入るときでさえ、ボールを離さないほどだ。人なつっこいバスケ少年のまま、日本を代表するビッグな選手になってもらいたい。
文・写真 泉 誠一