勝ち残った心愛に対し、「自分に勝った、イコール優勝。もう優勝しか道はないから、絶対に下を向かないで、常に上だけを向いて勝ち進んでほしいです」とエールを送った友愛。このツインズ対決にはやはり複雑な想いも抱いていたようだが、戦い終えると自らも前を向き、これからの成長を誓った。
「対戦が決まったときは自分が心愛に連絡して、『この組み合わせは何なんだ』って話をしたんですけど、心愛はすごく楽しみにしてたっぽくて。自分は楽しみという気持ちもあったんですけど、1回戦で勝敗が決まってしまうっていう難しさも感じながら練習してきました。大学でもバスケを続けるので、また心愛と戦えるときまでに成長できたらと思います」(友愛)
妹からエールを受けた心愛だが、精華女子高(福岡)と戦った準々決勝でわずか1点差の敗退。振り返れば、一昨年度は3回戦で終了間際に逆転を許し、昨年度も準々決勝で最大21点差をひっくり返されるなど、苦汁を飲まされ続けた。インターハイやU18トップリーグでも優勝は叶わず、最後まで日本一には手が届かない3年間だったが、心愛は自身が選んだ道を決して後悔はしていない。
「桜花学園に声をかけてもらって、それ自体が夢のようなことで自分は想像もしてなかったんですけど、日本一を目指すと言って親元を離れて、この厳しい環境の中でみんなと切磋琢磨して成長してきて、この選択は間違ってなかったと思うし、結果はこうなりましたけど、みんなで頑張った過程は良かったと思います。
大学でバスケを続けるんですけど、日本一を1回も獲れてないので、大学でまた日本一を目指してやりたいですし、技術の面だけじゃなくて精神的にも成長していきたいです」
桜花学園では、言うまでもなく名将・井上眞一コーチの指導を受け、確かな成長の跡を刻んできた。聖和学園戦でも証明したように、オールラウンドなプレースタイルを身につけたことも然り、そして、より強い気持ちでプレーできたことも然り。心愛は、「精神面を課題に挙げたんですけど、メンタルはだいぶ強くなったほうで、今回は来れなかったんですけど先生にすごくしごかれてきて強くなれたと思います」と井上コーチからの薫陶に感謝を語った。その5日後に井上コーチがこの世を去ることは、このときの心愛にはもちろん知る由もないが、たとえ日本一の夢は果たせなくとも、3年間の成長ぶりを見届けてもらうことはできたのではないだろうか。
それぞれが言っていたように、2人は大学進学が既に決まり、今後は対戦の機会が増えることも予想される。名門で心身を磨かれ、キャプテンも務めるまでになった心愛と、3×3のU18代表としてワールドカップの舞台に立ち、日本に銀メダルをもたらした友愛。異なる道を歩む双子の姉妹の物語は、これからもまだ続いていく。
文・写真 吉川哲彦