青山学院大といえば、トップリーグ選手を多数輩出し、2000年のインカレ初制覇以降は黄金時代も築いた大学界の名門。近年は低迷し、2022年には関東学生リーグ2部降格の憂き目にも遭ったが、新監督を迎えた今年はオータムリーグで16勝6敗の2位という成績を残すと、入替戦を制して1部復帰を実現した。
3年ぶりに出場したインカレはグループステージを難なく突破し、決勝トーナメントに進出。その初戦の相手は、2部リーグ戦で1位の座を譲った早稲田大が相手という、青山学院としては是が非でも勝ちたい試合だった。しかし、第4ピリオドで8-22と失速し、前半に奪った9点のリードをひっくり返される無念の黒星。就任初年度で関東1部復帰に導いた竹田謙監督も、悔しさを隠せない。
「4年生を中心に選手と学生スタッフが頑張ってくれたので、良いものを見させてもらったなと思います。自分も楽しかったし、みんなに助けてもらって1部昇格という結果を得られたのはすごく嬉しかったです。でも、リーグ戦の順位もそうだし、トーナメントや新人戦ももっと力があるのにそれを発揮させてあげられなかったという、もどかしい気持ちのほうが大きい。負けた直後だから余計にそう思うのかもしれないですけどね。
リーグでも戦ってきた早稲田だったので、尚更勝って次に行きたかった。関東12位だったから、ベスト16は順位通りの結果。ベスト8という目標が全く無理という感覚は誰も持ってなかったと思うので、それを実現させられなかったのは悔しい。こういうクロスゲームになると、コーチの力の差が出る。やっぱり自分が勉強不足だなと思うし、申し訳ない気持ちはありますね」
今もなお横浜ビー・コルセアーズでアドバイザーという肩書を持つ竹田監督が母校にジョインしたのは、2月のことだった。1度目の現役引退後にWリーグ・デンソーでアシスタントコーチの経験はあるものの、指揮官の肩書を背負うのは初めてのこと。難しいことも当然あっただろうが、就任してすぐに結果を残した以上、その手腕は評価されて然るべきだ。竹田監督は自発的に取り組んだ選手たちを称えるが、それを促したのが竹田監督でもあった。
「僕が何かをしたというより、選手たちが『ちょっと竹田やべぇな』って気づいちゃって(笑)、それからは自分たちでコミュニケーションを取る量も増えたし、試合の中でも選手たちが話し合って『これをやろう』というのがあったのが、結果が出た要因だと思います。それをもっと良い形で発揮させる方法はあったと思うし、それが出来なかった反省は大きいです。
チーム作りに関して、『こうでなきゃいけない』というのは全然なかったし、『自分はこうしたい』とも思ってなかった。結局、やるのは選手なので、選手がどうしたいかということはなるべく聞くようにしてて、それがどれだけ形になったかはわからないですが、みんな一定の手応えは感じてくれたんじゃないかと思います」
育成世代を指導する醍醐味は、チームも選手個々も成長がはっきりと見てとれること。プロの世界に長く身を置いてきた竹田監督は、刺激のある毎日を送ることができた。
「さっきもミーティングで話してきたんですが、僕が入った2月と比べたら本当にビックリするくらい、みんなが人間的にもバスケットのスキルも成長してくれた。『こんなことができるようになるんだ』って、そこはもう本当に感動するレベルでしたね。学生たちのエネルギーの中で生活するなんて、そんな経験は大人になるとできないじゃないですか。それは本当にラッキーだし、楽しかった。みんなで苦しんでもがいてつかんだ昇格だったので、とにかく嬉しかったです。年甲斐もなくというか、年齢は関係なく、仲間としてチームとして努力してきて、それが一つの結果に表れたことが良かったなって」