「メッチャメッチャ苦しかったし、もうダメなのかなってネガティブな気持ちも出てしまいました。でも、まわりのみんなのおかげでここまで戦うことができ、きつくても応援してくれる人がすごくいて、そのおかげで最後まで走り回れたのかなと思います」
過去3年間、何もスタッツを残せなかったインカレ決勝だが、最後の最後にチーム最多の27点を記録し、2連覇へと導いた。試合後の喜びの声を求められ、「すごくうれしい気持ちでいっぱいなんですけど、ものすごい激闘であり、オーバータイム4回という経験したことがない大会になり、自分にとっても良い経験になりました。思い通りにいかないことや相手にアジャストされて、自分たちのペースや流れがあまり来なかったんですけど、自分も仲間も全員が信じて、もうよくわかんないけど……良い大会になりました」とまとまりのつかない感情が溢れ出すほどの激闘だった。
オリンピックのサイクルと同じように、4年間は長い。大学生活の十分な時間でどこまで高めることができるか、自分自身との戦い。インカレ決勝など大舞台に立つことができれば、その過程における課題や自分と位置を知ることもできる。しかし、佐藤や高田にはその機会がまわって来なかった。それでも乗り越え、最高の結果を手に入れられたのも4年間の努力の証。最後まで笑顔でコートに立ち続けた佐藤へ、MVPというご褒美が与えられた。
アランマーレへ進むことは「楽しみではあるんですけど…」
年明け1月10日から再開するWリーグでは、アーリーエントリーとして出場が可能になる。白鷗大学からアマカがトヨタ自動車、舘山は日立ハイテク クーガーズ、高田は山梨クィーンビーズ、そして佐藤はアランマーレへ進む。優勝とMVPを受賞した佐藤も、きっと自信を持って次のステージへ行けるのではないか?
「ネガティブな性格なので、自信が本当にない。だから、これからのことは分からないですが、チームに貢献できることができれば良いかなぁ。楽しみではあるんですけど、やっぱりプロの舞台は強度も違うだろうし、やることも違うので、1つひとつ理解しながら、合わせながらやっていければ良いかなと思います」
Wフューチャーの山梨へ進む高田とは、1月25日からの2連戦で対戦するチャンスがすぐにやって来る。しかし、他の仲間たちはWプレミアにおり、「今いる舞台で全部勝たなければいけないと思っています。少しでもチームの勝利に貢献できるようにがんばりたいです」とアランマーレを昇格させ、仲間と再会できることがひとつの原動力とする。樋口先輩と一緒にプレーできることも心強いはずだ……「でも、偉大な先輩だったので、ちょっとがんばってついていけるようにしたいです」とさっきまでコートで見せていた覇気が全く感じられない。佐藤の性格上、これまでどおりにマイペースで少しずつ成長すれば良い。ただし、トップリーグでは待ってもらえる時間が限られており、大学よりも短いかもしれない。自信の裏返しとなる努力さえ続ければ、MVP級の活躍をトップリーグでも必ず見せられる。その日を気長に待ちたい。
文・写真 泉誠一