4年間積み上げてきたチームの一体感が最後に出た試合だった
桜花学園高校の #13 オコンクウォ スーザン アマカと #75 佐藤多伽子が、白鷗大学に入学したのは2021年のこと。高校3年時のラストゲームとなったウインターカップ決勝ではアマカとともに40分間コートに立ち続け、高校日本一の歓喜の輪に佐藤もいた。ひとつカテゴリーが上がった白鷗大学も、常に日本一を決めるインカレ決勝まで勝ち上がる強豪校。1年時、アマカはその大舞台でも先発で出場し、16点・13リバウンドとチームトップの活躍。しかし、ライバルに67-88で敗れ、5連覇をアシストする結果となった。3年連続の同一カードだったが、この年も白鷗大学は銀メダルに終わる。2年後、佐藤が3年生になった昨年、ようやく立場が変わり、7年ぶり2度目の頂点に立った。しかし、優勝を争うそのコートに佐藤が立つ機会は過去3年間、1度も来なかった。
「これまでは楽しいことよりも苦しいことの方が多かったし、本当に先輩方がすごい人たちばかりだったので、昨年まで試合に絡める経験も全然なかったです」
優勝を飾った昨年の4年生は三浦舞華、田中平和(ともにトヨタ自動車アンテロープス)、樋口鈴乃(プレステージインターナショナル アランマーレ)、桐原麻尋(富士通レッドウェーブ)はいずれもWリーグへ進み、ルーキーシーズンを送っている(※小林美穂は社会人リーグのミツウロコでプレー)。樋口はWフューチャーで平均13.8点、5アシストと活躍し、両部門でランキング2位(※2024年12月19日現在)。田中はトヨタ自動車でこれまでの16試合すべて先発出場。“すごい先輩たち” が抜け、チャンピオンの看板を受け継いで新チームをスタートさせた当初、「すごい不安で、自分自身もこれまで試合にあまり出ていなかったので、すごい不安でした。それは同級生全員が思っていたことです」と “すごい不安” を2度繰り返すほどのプレッシャーも合わせて背負うことになった。5人の4年生のうち、1年のときから活躍し、優勝争いも経験しているのはアマカだけ。キャプテンの #20 舘山萌菜と #68 髙木愛華は2分程度のプレータイムをもらい、その空気を味わった。舘山は2年次に、髙木は今大会直前にケガに見舞われ、思うようにプレータイムを伸ばせずにきた。佐藤とともに、 #23 高田栞里はこれまでのインカレ決勝はいずれもDNP。4年生になった今年、最初で最後の大舞台に立った。
佐藤の性格は「本当にネガティブで自信がない」。優勝を目指してはいるが、前向きなモチベーションよりも不安に支配されてしまう。「でも、試合を重ねていくうちに自分たちのスタイルでバスケができるようになり、少しずつ自信もついていきました。4年間積み上げてきたチームの一体感が最後に出た試合だったと思います」と経験したことのない60分に及ぶ激闘を終えた。インタビューに応える佐藤の笑顔は、自信が満ち溢れていたように見えたのだが……。
もうよくわかんないけど……良い大会になりました!
今年のインカレ女子決勝も6年連続となる白鷗大学 vs 東京医療保健大学が対戦。4つのクォーターでは決着がつかず、さらに4つのオーバータイムにもつれる歴史に残る戦いだった。初のファイナルに臨んだ佐藤は、これまでの3年間との帳尻を合わせるように44分34秒、他の4年生がファウルアウトしていく中、最後までコートにたっぷり立ち続けた。東京医療保健大学に17点リードされた第3クォーター、佐藤の性格上、「ポジティブには行けない気持ちがあり、もうダメかなって正直思っていました」と正直すぎる振り返り。しかし、バスケは1人で戦うわけではないチームスポーツ。「ベンチやスタンドから『自分を信じろ』と声をかけてくれて、そこで『まだやれる』と思えました」と仲間たちが無理矢理前を向かせたことで、佐藤はさらなる実力を発揮する。同点に追いつき、東京医療保健大学に先手を取られるオーバータイムも笑顔でチームを引っ張った。