「この試合は最初からあまり調子が良くなく、途中で点差も離れてしまって、負けるのではないか…という思いがちょっと頭を過っていました。でも、第4クォーターの自分が出ていない間に先輩や仲間たちががんばって追いついて、(ファウルゲームによって)舘山さんが退場してしまい、そこでコートに戻ったときはもう点を取るしかないと思っていました。最後の場面もたまたまスティールでき、本当にすっごい緊張したんですけどレイアップを決めることができて、延長につなげられて良かったです」
ターンオーバーも含めて同点を演出するためのデザインだったのではないか。どこか夢を見ているようなとても長く感じた3.8秒間。ひとつ前のミスを帳消しにする池田がスティールから速攻を決め、73-73。40分間の戦いとともに、ドラマの前編が終わった。
両チームとも3人がファウルアウトする総力戦
延長がはじまる前、白鷗大学は舘山がファウルアウト。東京医療保健大学は足を痛めた1年生エースの #5 絈野夏海もベンチで仲間たちの勝利を祈っていた。さらに登場人物が減っていく。6点リードした東京医療保健大学だったが、#3 イベ エスター チカンソ、大脇、島村と主力が次々とファウルアウトでコートを去る。白鷗大学が息を吹き返し、リバウンドをねじ込んだアマカの得点で83-83、2度目の延長へ突入した。
白鷗大学も高田、3度目の延長ではアマカも5つのファウルで退場し、4年生が抜けて行く。どちらも総力戦となる気力の戦い。靴紐を結び直した絈野が、志願してコートに戻ったが約2分でふたたび退く。いつ集中が切れてもおかしくない。「ちょっと何とも言えないけど…」と佐藤監督も苦笑いする池田の3ポイントシュートが、3度目の延長を救った。経験したことのない長い延長が続き、「気持ち的に結構しんどくて、自分はスリーポイントが特に得意でもないのにパスが回ってきて、でもオーバータイムの間だけはシュート感覚が良かったのでもう打つしかない、先輩からもらったパスは全部打とうと思っていました」と気持ちで決め切り、98-98。3度目の延長でも決着はつかず、4度目の5分間がはじまった。
どちらもエネルギーが枯渇する中での削り合いは、ミスしても致し方ない。白鷗大学は池田と #11 佐々木凜の2年生ツーガード、そして #41 アダム アフォディヤと #77 東小姫の1年生が最後の場面を託された。唯一4年生の佐藤は、「他の4年生たちの分もやらなければいけないという思いがありました。ベンチやスタンドから声をかけてくれ、目を合わせてくれて『できるぞ』と気持ちを与えてくれていました」と仲間たちが背中を押し、一緒に戦っていた。コート上では誰よりも声を出し、フィナーレを盛り上げる。長い長い戦いの結末について、両指揮官が振り返る。
「いくつか理由はあると思うが、最後にターンオーバーから同点にされたことで勝ちを取りこぼしてしまった。その状況を設定したトレーニングを徹底し切れていなかったことが敗因であり、私の責任」(恩塚監督)
「最後の最後に佐々木が飛び込んでバスケットカウントを決め、勝負を決めた。その嗅覚は経験してきて学んできたのかな」(佐藤監督)
111-103。ディフェンスディングチャンピオンの白鷗大学が2連覇を達成した。