パリオリンピックへ向かう女子日本代表の最終選考まで残り、リザーブ選手として直前まで帯同した絈野夏海。たくさんの経験と刺激を手土産に東京医療保健大学へ戻り、待ちに待った本格的な大学シーズンに突入。しかし、9月4日の開幕戦はベンチではなく、その姿は客席にあった。直前の練習試合でケガをしたことで1週間遅れの4戦目、9月11日の日本体育大学戦で関東大学女子リーグ戦デビュー。4分26秒間コートに立ち、その日は無得点に終わった。
「リーグ戦の入り出しは自分の調子としてはあまり良くなく、スランプに入っていた時期が長かったです。後半になるにつれて、ポジションも3番(スモールフォワード)から2番(シューティングガード)へ、さらに1番(ポイントガード)まで上がっていったことで、少しずつ自分の良さを出せるようになってきたかなと思います」
岐阜女子高校時代からオールラウンダーとして縦横無尽に活躍。しかし、カテゴリーがひとつ上がるとフィジカルや経験の差が少なからず障壁となった。白鷗大学との最終戦ではポイントガードやシューターと複数の役割を担う。「そのときの流れを読みながらプレーを選択しなければいけないので難しい」とポイントガードはまだまだ発展途上。シューティングガードと併用したことで、「ずっとボールを持っていてもまわりに対応されてしまいます。1番でプレーしながら2番で合わせる。それによってチームメイトとうまく合わせながら、プレーがしやすくなりました」と楽しさを見出す。2巡目を迎えた9月29日の専修大学戦から、すべてのチームから2桁得点を挙げる活躍を見せた。
「しっかりチャンスを見極めてシュートを狙うことを、恩塚監督からも声がけしてもらっていました。自分のタイミングでシュートを打つことを意識していたので、決め切ることもできました」
女子日本代表でも絈野の才能を開花させてきた恩塚亨監督が、10月1日より東京医療保健大学に復帰。試合中はベンチに入らず、伊藤彰浩ヘッドコーチが変わらず指揮を執っていた。恩塚監督の存在は「アドバイスが幅広く、分かりやすいです。自分の引き出しを開けてくれるので、勉強になることが多いです」と絈野は吸収し、スタッツで成果を現している。
はじめて臨んだリーグ戦ではあったが、「高校時代に経験したときと同じような流れで進んでいったので、コンディション的にも準備しやすかったです」と岐阜女子高校で出場したU18日清食品トップリーグが役に立った。11勝3敗、準優勝の結果も前向きに捉えている。
「これまでの白鷗大学戦は何もできずに終わってしまった試合が多かったです。でも、最後は点数こそ離れてしまいましたけど、自分たちとしては手応えもありました。この負けをずっと引きずっていても意味がないので、次に切り替えていきたいです」
最終戦は30点差をつけられ、白鷗大学に優勝を奪われた。1巡目は6点しか挙げられなかった絈野だが、最終戦は3ポイントシュートを4本決め、20点の活躍。現時点での白鷗大学との差について、「(オコンクウォ スーザン)アマカさんのリバウンドは驚異的なので、そこに負けないようにこれからもっと積み重ねていかなければいけないです」と課題を持って、約1ヶ月後に迫るはじめてのインカレへ向かう。
入学以来、絈野は女子日本代表活動に参加していたことで練習も思うように参加できず、リーグ戦開幕当初はケガで離脱。日本一を奪い返すための期間は、たっぷり練習にも打ち込める。ライバルたちと実際に肌を合わせたことで、多くの情報も得られた。それらを踏まえ、「得点力やディフェンス力で貢献しながら、チームを勝利に導けるような選手になりたいです」というスーパールーキーは、インカレでどんな姿を見せてくれるのだろうか。
文・写真 泉誠一