野溝にとって、山梨学院大学には同サイズの選手が多いことで「慣れています。でも、いざ試合になるとやっぱり少しやりづらい部分もありました」と1学年下の山本に一目置く。「シュートも上手だし、状況判断にも長けた選手。尊敬していますが、やっぱり負けたくない相手です」と野溝が得点王争いの差を広げる。
山本は、「ディフェンスでついてみて本当に上手いですし、自分より少ししか身長も高くないんですけど、ずっと得点を取っていて今は1位ですのでリスペクトしています」と称え、素晴らしい両者の直接対決は見応えがあった。早速、CS PARKのSNSでアップされている動画でもぜひ確認いただきたい。
アンダーサイズを補うために磨きをかけるオフェンス力
4年生の野溝も、3年生の山本も将来はBリーグを目指している。その目に止まるためには、スタッツを残すことが手っ取り早い。アンダーサイズだからこそ、「得点面でチームを支えられるようなオフェンシブプレーヤーになりたいです。小さい分、ディフェンスでは絶対にアドバンテージになってしまうので、それを補えるような得点力を目指しています」と野溝は長所に特化する。理想とするのは「トレイ・ヤング(185cm)。NBAの中では小柄だし、フィジカルも劣るけど、30点・10アシストを毎試合のように取れる選手。そういうプレーが自分もできれば、この先も続けていけるのかなと思っています」。しかし、冒頭に述べたとおり、得点王や個人の数字に関心はない。「今のチームにとってプラスになるプレーをすることで、自分のスタッツも上がっていくのがベストだと思っています」とまだ1勝しかしていないチームの勝利こそ渇望している。
山本も同じであり、「背が小さい分、自分の存在価値をアピールするにはやっぱり得点だと思っています。Bリーグを見ていても富樫(勇樹)選手や河村(勇輝)選手もそこで活躍し、見ていても一番分かりやすいので自分も得点にはこだわっています」とオフェンスに活路を見出している。昨年の平均14.2点から数字を伸びている要因として、「チーム全体が自分にどんどん打て、と声をかけてくれています」とエースとしての自覚や覚悟を持って、チームの責任を全うしている。
神奈川大学は10月27日時点で10勝10敗。2018年に1部昇格して以来、勝ち越したことも勝率5割で終えたこともない。「良い形で、良い課題を見つけながらリーグ戦を通して成長していくことはずっと意識しています」と山本は力を込め、「インカレ優勝」を目標にし、歴史を変える。
素晴らしきオフェンシブプレーヤーたちだが、アンダーサイズを言い訳にすることなくディフェンスではコンタクトを厭わず、当たりに負けないフィジカルの持ち主であることも付け加えておこう。
文・写真 泉誠一