頼もしい後輩たちを迎えたからこそ、江頭は昨シーズン終了と同時に「絶対に日本一を獲ってやる」「来年こそ日本一の景色が見たい」と高い目標を思い描くことができた。高校より1学年多い大学バスケは、経験やフィジカルも平行して大きな差となる。4学年揃ってチームであり、厳しさを改めて諭したからこそ、「上級生がそのレベルをコート上で示さなければならない、と4年生同士で話しました。試合に出るかどうかは関係なく、練習中からその姿を見せ続けることを常に意識しています」と江頭は自らにプレッシャーを課し、覚悟を決めた。全員が想いをぶつけ合い、「このチームで日本一を目指そうと、あらためて同じ目標を定めたことで良い雰囲気になりました。あの夏を全員で乗り越えられたのは良かったです」と結束力が高まった。
自分の性格について、「プレッシャーに強いわけではなく、どちらかと言えばメンタルも弱い」という江頭。リーグ戦を迎えるまでも考えすぎ、開幕戦を落としたことでふたたび思い悩む。学生スタッフとしてベンチに入る江村の存在が大きい。
「本当に助けられていますし、なんかすごい人間性だなって思うことがたくさんあります。ケガをして1年間復帰できないのが決まっていますが、キャプテンとしてずっと言い続けてくれるし、怒ってもくれます。だからこそ、『優有のためにがんばろう』『こんなんじゃダメだ』『もっと楽しまなければいけない』と常に考えています」
これまでは誰かのためにバスケしようと思ったことはなかったそうだ。しかし今は、誰よりも大好きなバスケをしたくてもできない「優有のためにがんばろうと思います。彼女が見ていて『なにしてんの?』と思われたくないし、指摘してくれるからこそしっかりコート上で表現していかなければいけないです」という江頭の背中を押す江村の姿は、コートに立っているとき以上に大きく見えた。
インカレを含め、4年生にとっての大学バスケはあと約3ヶ月で終わる。「最後は絶対に笑えるように、どんな結果になっても良いように、もうすべてを出し切ってやり切る。結果として負けたり、ダメだったりしてもすべてを出し尽くすことができれば、後悔しないで終われるから」と江頭は自分に言い聞かせるように、さらに強い言葉を吐いた。
「シュートを決めなきゃ、やんなきゃ、守らなきゃとかいろんなことを考えるのではなく、とにかくやるべきことを徹底して目の前の相手をぶっ倒して、本気で勝ちに行く。でも、最近は悩みすぎて、ワァーってなってしまうこともあり、自分自身と戦っています。もうあと3ヶ月で終わっちゃうし、悩んでいても仕方ない。だから行動するだけ。最後の3ヶ月はバスケに向き合い続けて、もうダメでもやり続けるしかない。全部を出し切った上で結果がついてくる。そうすれば、どんな結果も真摯に受け止めることができると思います」
さらなる上のカテゴリーへ進む選手は、まだまだコート上で見られるチャンスはある。だが、江頭はさらに学びを深めるため、本気でバスケと向き合うのもあと3ヶ月しかない。高校や大学バスケで魅せられた選手たちの最後の勇姿を見られるのも、あと3ヶ月である。
文・写真 泉誠一