今シーズン最初の関東大学スプリングトーナメントでは、創部初のベスト4進出を果たした山梨学院大学。昨年までは武内理貴がチームを牽引し、卒業後は広島ドラゴンフライズに入団。早くもチャンピオンメンバーとなった。そんな大先輩に「昨年はかなり頼り切ってしまっていました」というのは、2年生の #5 中村千颯だ。絶対的エースが抜けた新チームは「全員でアグレッシブにディフェンスから入って、オフェンスでも全員で得点を獲る」スタイルへ移行する。関東大学スプリングトーナメントでの中村はシックスマンだったが、#9 齋藤晴と #98 スヴェトリシック イゴール、1年生ながら得点王&3ポイントシュート王に輝いた #14 菅野陸は先発を担う。春先から1・2年生の活躍が目立っていた山梨学院大学だけに、第64回関東大学バスケットボール新人戦での躍進も期待された。
今大会へ向けて掲げた目標はベスト4。あと1勝に迫った日本体育大学との準々決勝へ向け、「トランジションが速いチームなので、まずそこを徹底して守ろう」と確認する。しかし、結果は68-77で敗れ、目標には届かなかった。「ガードに対するキャッチアップやセーフティーの部分を徹底できなくて、トランジションのところを守ろうと言っていたのに、そこでやられてしまったのは反省点です」と中村は悔やむ。終始相手の得意なプレーを出されてしまい、「チーム全体として良かった点は、もしかしたらこの試合ではひとつもなかったのではないかと思っています」と肩を落とす敗戦となった。
この試合で #98 スヴェトリシック イゴールが負傷し、続く順位決定戦は出られない。新人インカレに出場するためには7位以上に入らなければならない。「明日の試合(5-8位決定戦:白鷗大学)に勝てば確定するので、まずは勝つことだけを考えて、チーム全員でもう1回ミーティングをして挑みたいです」とキャプテンの中村は、もう一度チームの士気を高める。翌日、イゴールを欠く山梨学院大学は一気に小さなチームとなったが、3ポイントシュートを8本決め、60点台に抑えるディフェンスで対抗する。しかし奮闘むなしく、64-65とたった1点及ばなかった。新人インカレへのラストチャンスは、関東大学3部リーグの立教大学との7位決定戦。追う展開となった山梨学院大学が、終盤に猛追したが70-73で連敗し、新人インカレ出場は果たせなかった。
準々決勝で敗れたあと、古田悟監督は「受け身になり、引いたようなプレーになってしまっていた。選手全員が、積極的にハードワークしていかなければならなかった」と反省点を挙げ、下級生チームの経験不足が露呈した。関東大学スプリングトーナメントではベスト4に入ったが、「あくまで3・4年生がいたからであり、この1・2年生だけでは成し遂げることができませんでした」と中村は、チーム力の差を痛感する。結果は8位で全国大会への出場を逃し、新人チームの挑戦は関東予選で終止符を打った。
「昨年は4年生が主体となって、先輩たちの力でインカレベスト8の結果を残すことができました。でも、今回は目標としていたベスト4は達成できず、主力の4年生が抜けた分、やっぱり1年生のときから経験を積んでいる自分が責任感を持ってプレーしなけらばいけないです」という中村はこれまでの成功体験とともに、悔しい思いをしたからこそつかんだものが必ずある。プレッシャーに押しつぶされるように、掲げた目標の一歩手前で敗れるのはよくある話。ベスト4のひとつ上を目標にできるだけの実力が、今年の山梨学院大学には十分備わっているはずだ。
文・写真 泉誠一