富山がリーダーシップを発揮しただけではなく、欠場を余儀なくされた2人の代わりを複数の選手で補う。2年生の #6 内山叶人や #99 バラダランタホリ玲依らの成長が頼もしい。
「今までは流嘉洲やジャヘルがずっと試合に出ていることが多く、下級生や試合に絡めなかった選手は公式戦であれば、ガベージタイムくらいしか出番がありませんでした。でも、新チームになって彼らがいない分、ローテーションが多くなり、多くの選手が試合に出ることによって経験値をしっかりと積み上げてきたものが、今大会で出せました。後輩たちの成長はうれしく、自分にはないところを内山やタホリは持っています。そこがオフェンスでもディフェンスでもギャップになって、良いオフェンスにつながったと思います」
通常は留学生2人体制の大東文化大学だが、スプリングトーナメントのロスターは3年生の #39 アブドゥレイ トラオレだけ。センターの先発としてコートに立ったのは、195cmのタホリだった。インサイドにボールを入れるだけではないスタイルが見られ、「留学生と一緒にプレーするときよりもスペースが広がるので、みんながドライブを仕掛けたり、ファイブアウトフォーメーションであったり、今年意識しているズームアクションからアタックすることができ、去年に比べてハーフコートからのペイントタッチが増えているのかなと思います」と富山も手応えを感じ、より生き生きとプレーしているように見えた。
結果を求めるラストイヤー、4年生にとっては関東大学オータムリーグ、そして日本一を決めるインカレの2つに勝負を懸ける。関東大学スプリングトーナメントを経て、「ずっとチームの課題だったコミュニケーションのところでスイッチミスなどが起きて、ディフェンスを遂行し切れていませんでした。でも、今大会ではどんどん声を出すことができており、雰囲気も良くなっています。あとはもうシュートを決め切ること。相手より1点でも上回ることが大事になります」と大東文化大学をリーグ戦とインカレで2度目の優勝へ導き、初の2冠を狙うことでプロへの道をこじ開ける。
日本一を争うチームの中心にいる今の姿を、淡路島にいた頃の富山少年は想像していただろうか?
「まったくしていなかったですね(笑)」
文・写真 泉誠一