18年にわたって率いた入野貴幸コーチが東海大学のアシスタントコーチに転任し、昨年母校に凱旋した小滝道仁コーチの指揮下で新たなスタートを切った東海大諏訪。夏のインターハイでは2回戦敗退となったが、敗れた相手の日本航空はその後快進撃を披露し、初の日本一に輝いている。その日本航空戦がわずか6点差だったことを考えると、ウインターカップの東海大諏訪には大きなチャンスが訪れることも十分に考えられた。
迎えた12月26日の3回戦、順当に勝ち上がってきた東海大諏訪の前に、今度は福岡第一が立ちはだかった。留学生の高さに臆することなく、果敢にドライブを仕掛けて得点を重ねた東海大諏訪も、後半に入ると福岡第一は留学生に対するディフェンスの収縮を利用して、効果的な長距離砲を連発。第3クォーター以降は点差が開き、最終的には81-108と東海大諏訪は福岡第一の地力に屈する結果となった。前半終了時点では11点差とまだ射程圏だっただけに、小滝コーチは第3クォーターの自身の采配を悔やんだ。
「ゾーンを敷いたところで、相手の3ポイントに対して早めに手を打たなきゃいけなかったという点ですね。こういうゲームになったときの1つのポゼッションの重要性という、入野コーチから教わったことを今日すごく体感しました。ここをどうしていかなきゃいけないかを、練習の中でもっと突き詰める必要があるかなと感じてます。イメージしていたオフェンスが少し崩されてしまったことと、守りたいところがうまくいった部分とできなかった部分、あとは理屈じゃないリバウンドとかルーズボールに隙があるということを教えてもらいました」
昨年もACとしてチームを見ていたとはいえ、指揮を執る立場に変わるということは、チームにとって大きな変化。ディフェンスやルーズボールを大事にするスタイルは継承されていても、全てが以前と同じというわけにはいかない。指揮を託されて間もない小滝コーチには、その難しさが今まさに訪れようとしているところだ。
「入野コーチが作ってくれた土台がある中で1年間やらせてもらって、これから難しい部分と立ち会っていくんだろうなと思います。3年生が入った頃はコロナがありましたし、コーチが途中で代わるという経験も高校生ではあまりない。だからこそ最後に勝たせてあげたかった、彼らにもっとやってあげられることがあったんじゃないかという反省はあります」
これまでにWリーグ・富士通や地域リーグ・秋田銀行で指揮を執ってきた小滝コーチにとっては、男子チームの指揮も、高校生の指導も初めてのこと。この1年は、指導の方針も方法論も模索する1年だった。その中で、小滝コーチは自身にどのような存在価値を見出そうとしているのか。
「今までの舞台だったら大人に対してのアプローチの仕方になるんですが、今教えているのはこれからの伸びしろが大きい生徒たちなので、バスケットだけじゃなく人間性のところも大事で、バスケットを通してどういったことを学んで、彼らが社会に出ていって幸せな人生を送れるかどうかということがすごく大事になる。人生は気づきという力が足りないといろんな面で難しくなっていくので、その伝え方を自分も勉強していかないといけないし、そこを次の課題にしていけたらと思います」
小滝コーチが今フォーカスしているのは、選手たちの可能性を狭めないこと。選手に対して先入観を持たず、誰にも様々な可能性があるということをチーム作りのベースにしていこうというわけだ。