「心愛」とは、桜花学園でプレーしている双子の姉のことだ。中学まではずっと同じチームでバスケットに打ち込んでいたが、高校進学の際に心愛は地元を離れ、高校界屈指の伝統校でのチャレンジを選択。心愛もまた、下級生ながら桜花学園でスターターの座を勝ち取ると同時に、友愛と揃ってU16日本代表に選ばれてもいる。中学まで常にチームのエースだった双子の姉に追いつくことは、友愛にとって大きなモチベーションとなっているのだ。
ただ、この日、同じ時間帯に岐阜女子戦のコートに立っていた心愛は、一足先に試合を終えていた友愛が視線を送る中、最大21点差をひっくり返される痛恨の敗退。2人揃って、2年目の冬の大舞台から去り、インターハイに続いてウインターカップも姉妹対決は持ち越されることとなった。U18トップリーグで1度対戦があったとはいえ、負けたら終わりのトーナメントでの対決はまだ実現していない。
「中学まで一緒にやってきて、心愛がいつも一歩上をいっていた。心愛と当たるということが、自分が勝ち上がっていく中で1つの目標になってます。自分が今回負けちゃったので、桜花がリベンジして勝ってほしいという気持ちもあったんですけど、心愛も自分もお互い足りないところがあって勝ちきれなかったと思います。でも、また来年があるという意味では、またお互いに成長してここに戻ってきて、当たれるように勝ち上がっていきたいです」
その2人には、奇しくも同じ姓を持つバスケットの “師匠” がいる。元日本代表の阿部理は、史上最強世代との呼び声も高い1970年生まれの1人。当時の日本リーグでは、佐古賢一や折茂武彦といった世代を代表するスターを差し置いて新人王に選ばれている名選手だ。現在は地元・仙台で若年層の指導に当たっており、阿部姉妹もその教えを受けた。フレンドリーで面倒見が良く、器の大きいその人柄に、教え子として救われたところもあったようだ。
「バスケットの部分もたくさん教えてもらったんですけど、私生活の部分でも多く話させてもらっていて、自分がうまくいってないときに明るく話しかけてくださったり、あまり成長を感じられなくて悩んでるときにもよく声をかけてくれて、心の支えになってます」
2年目の冬は目標に届かず幕を閉じることとなったが、自身も言うように高校生活はまだ1年残されている。日本一を争う舞台で双子の姉と相まみえる日を夢見て、最後の1年はチームの先頭に立ち、より強い責任感を携えていく。
「今の3年生とベスト4の目標を達成することはできなかったんですけど、自分がもう一回り成長してチームを勝利に導く選手になれるように、もう1回、一から練習し直して、来年はベスト4を目指したいと思います」
文・写真 吉川哲彦