パワーアップ&スピードアップして完全復帰
絶賛熱戦が繰り広げられているFIBAワールドカップ。次元が違う8強の戦いぶりを見て、同じ大会に日本が出場し、そして3勝したのかと頬をつねりたくなる。4年前は1勝もできず、12チームの精鋭がしのぎを削り合う東京オリンピックは歯が立たず、世界との大きな壁を見上げるしかなかった。しかし、自分たちの力を信じ、相手ではなく日本の長所を突き詰めていった結果、フィンランド、ベネズエラ、カーボベルデと3大陸を代表するチームを見事に撃破。目標に掲げていたパリオリンピックへの切符をつかんだ。異例の盛り上がりを見せるバスケ界。当然、関東大学オータムリーグ真っ只中の大学生たちも刺激を受けている。
日本大学3年の米須玲音は、これまで世代別日本代表にさえ縁がなかった。昨夏、延期になっていたユニバーシティゲームスを目指すU22日本代表候補選手を集めた合宿に招集される。しかし、その後の新人インカレで右ヒザの大きなケガに見舞われてしまい、復帰まで1年を要した。
大学1年時、特別指定選手として川崎ブレイブサンダースでプロのコートに立った際、肩関節脱臼で戦線離脱。2年生となり、関東大学新人戦で復帰し、準優勝。プレ大会として新設された新人インカレへ進み、準決勝の大東文化大学戦で先に挙げたケガに見舞われた。
「肩のケガから復帰してすぐに靱帯をケガしてしまい、そこから1年間リハビリをしてきました。(春の)トーナメントで復帰することもできたんですけど、そこは城間(修平)ヘッドコーチとも話し合って、落ち着いてリーグ戦に合わせてしっかりリハビリをしてきたので、今は不安なくプレーできている感じです」
ケガは、レベルアップできるチャンスでもある。端から見る我々同様に、「やっぱり自分はまだ身体の線が細かったので、ケガした当初はそれが1番大きかったです」と米須は課題に向き合う。「ちょっと重くなって走れないこともありましたが、とりあえず身体を大きくして、そこから徐々に筋肉に変えたり、体幹を中心にバランス系のトレーニングをしたり、トレーナーさんと一緒に取り組んできました」とパワーアップした姿を見せている。
心配されたスピードは、プレーを見る限り問題なさそうだ。米須自身も「復帰した当初はちょっと重い感じがしていたんですけど、徐々に慣れていったことで自分のプレーが戻ってきました。今はもう全然スピードは落ちることなく、なんなら以前よりも上がっているかなと自分の中では思っています」と成長を遂げた。
これまでは真っ新なコートに立ち、先発メンバーとしてチームを勢いづけてきた。しかし今は、「セカンドチームで出ているので、試合の流れを自分の中でコントロールしながら、さらに味方を引っ張っていかなければいけないガードとしての責任があります。そこをしっかりできるようにしたいです」とベンチスタートを経験できているのもケガの功名である。
ケガをしていたときは、ベンチにさえ入れなかった。これまで以上に率先してベンチから声をかけ、「チームの士気を上げるようにしています。40分間しかない中で、自分がコートに出る時間も限られてきますし、その出ていない時間帯でチームとしてプラスになるにはどうすれば良いかを考えています。そこでしっかり声をかけるように心掛けています」とコート内外で元気な姿を見せている。