今大会を改めて振り返れば、同じブロックの東海大がまさかの予選1敗となったことでチャンスが巡ってきたと言える。が、それだけではベスト4には進めない。特筆すべきは東海地区予選決勝で屈辱的な大敗(49-77)を喫した中京大を破ったことだろう。前半3点のビハインドをひっくり返した後半は一進一退の展開となるが、我慢のバスケットで流れを呼び込むと67-58で勝利。中京大有利の下馬評を覆したこの一戦は「選手たちの自信につながった」だけではなく、「関東の大学と公式戦を戦うのは創部以来初めて」という準決勝への扉を開いた。先述したように筑波大との準決勝は52点差の大敗となり、日本大と対戦した翌日の3位決定戦も54-87で敗れたものの創部6年目の浜松学院大がこの大会を通して得たものはどのチームより大きかったのではないか。その証拠にインタビューに答える大口監督は終始笑顔。最後に尋ねた「大学チームを率いる今の心境は?」の問いには以下の言葉が返ってきた。
「大学生を教えるのはほんとに、もう、めっちゃ楽しいです。うちはバスケットだけで生きていける子ばかりじゃないので4年間を通して社会に出る準備も身に付けてほしい。全員が心1つになって1つの目標に向かうことは社会に出たらなかなかできないと思うので、それも貴重な勉強だぞって選手たちには話しています。うちみたいに小さくて、全国的に見たら個々の能力もそう高いと言えないチームが勝つためには何が必要なのかをみんなで考え、見つけたものをみんなで実行していきたいと思っています。筑波さんに52点差で敗れたあと、選手を見たらポイントガードの坂井晴哉(1年、今大会のアシスト王)が泣いているんですね。悔し涙を流しているんです。それを見たら、うちはまだまだ伸びていけるぞって気持ちになりました」
下級生たちが得た経験と見つかったたくさんの課題を持ち帰り、上級生たちとともに秋のリーグ戦を目指す。その先にあるのは2度目のインカレ出場。
「一歩ずつ、一歩ずつでいいから着実に成長していきたいです。もし、インカレに出られたら関東の強豪チームとまた戦ってみたい。今度はもっといい勝負ができるよう、それを目標にしてまた明日から頑張っていくつもりです」
文 松原貴実
写真 泉誠一