その約20秒前、リードを奪うシュートを決めて喜びを爆発させた上野。「この大会期間中、自分の調子があまり良くなくて、いつも先輩に助けられてばっかりでした。だからこそ決勝では、このチームとして最後の試合だったので、やってやろうって気持ちで臨みました」とようやく思い描くようなプレーができ、チームハイの20点をマーク。しかし、「最終的に負けという形になってしまって、すごく悔しいです」と涙を見せた。
23点を挙げた三次も、「これまでの2試合は自分の強みがあまり出せず、得点も自分が思うほど取れてなかったです」と本調子ではなかった。決勝へ向かうにあたり、「この代々木第二体育館っていう大舞台に立たせてもらうんだから、チームのみんなと楽しんで戦いたいということを一番に考えていました。楽しみながら、最後までチーム一丸となって戦うことができました」と満足のいくプレーを出せたことで、最高の結果とともに優秀選手賞とアシスト王も受賞した。
試合中はいろんな表情を見せた上野に対し、「楽しむ」と言う三次はコート上では常に険しい表情が続く。「顔には出ないけど、相手に流れが行っているときもチームのみんなが声をかけてくれて、楽しんでプレーしたいとずっと考えながら戦っていました」と振り返り、ようやく満面の笑顔を見せてくれた。
決勝戦では仲の良い二人がバチバチのマッチアップを見せる。三次の印象について上野は、「上手い、速い」と完結に応える。逆に三次は「すごいドライブが鋭い。日本代表では仲間として頼もしい存在でしたが、いざ相手になると圧倒されて、ファウルも自分は積んでしまい、ちょっとやられたなと思います」と上野について語る。
決勝では、序盤は三次が積極的に得点に絡んで行ったが、上野がディフェンスの強度を強めたことで後半は逆の展開となった。「U17日本代表では一緒だった選手なので、1番に負けたくないという思いで戦っていました」と上野はメラメラと燃えていた。「でも、やっぱり真歩は上手くて、シュートとか3ポイントとか簡単に決められてしまって、後半もちょこちょこ決められてすごく悔しかったです。でも後半は、自分も筑波に流れを持ってこようと思ってがんばりました」と続け、持てる力を出し合った。
東西に分かれた二人が次に公式戦を戦うのはインカレとなる。全国の舞台に上がってこなければ対戦できないこのライバル対決に対し、敗れた上野は「次はもう倒します。ボコボコにします」と語気を強める。後ろで取材の順番を待っていた三次はその言葉を聞いており、「ボコボコにされないように、自分もボコボコにします」と追われる立場になったからこそ返り討ちを誓った。新人インカレは終わったが、ワクワクする世界を経験したルーキーたちの熱き戦いの幕が切って落とされた。
文・写真 泉誠一