女子日本代表が新人インカレを引っ張る“朝比奈無双”と予想したが…
大会前、“朝比奈無双”で筑波大学が優勝すると予想していた。女子日本代表デビューを果たし、筑波大学に戻ってきた #14 朝比奈あずさを中心に「第1回全日本大学バスケットボール新人戦」(以下、新人インカレ)が展開すると思っていた。しかし、ひと筋縄ではいかないのが大学バスケである。日本経済大学には193cmの #44 ニャイ アラムと198cmの #7 ファール アミナタがおり、準々決勝以降は留学生とのマッチアップが続いた。決勝の相手となった大阪体育大学の #19 アイエビドゥン グレイスは183cmと、朝比奈より2cm低いが身体能力が高く、躍動感溢れるプレーは異なる次元の持ち主。その戦いを選んだのも朝比奈自身である。
今大会はシックスマンとして起用された朝比奈がコートに入ると流れが変わる。「ロンさん(朝比奈のコートネーム)は留学生を相手にすごく体を張ってインサイドでがんばってくれているので、上のポジションにいる自分もがんばろうと思えるようになりました」と勇気をもらっていたのはルーキーの #24 上野心音だ。オフェンスよりも、ディフェスやリバウンドで朝比奈は奮闘し、キャプテンの古谷早紀とともにチームを支える。だからこそ上野や #11 川井田風寧、#71 鈴木杜和ら1年生が躍動できた。第4クォーター開始早々、54-42と筑波大学が2桁点差にリードを広げる。
そのまま筑波大学のペースで進み、予想どおり “朝比奈無双” で完結すると思われた。しかし、“事実は小説よりも奇なり”。ここから大阪体育大学が素晴らしい追い上げを見せる。58-48と10点差をつけられた大阪体育大学だったが、第4クォーター中盤から残り2分まで13点のランで猛追。気づけば、61-58で逆転していた。残り24.4秒、筑波大学の上野が3ポイントシュートをねじ込み、63-61とリードを奪い返す。
大阪体育大学は最後のタイムアウトを要求し、村上なおみ監督は #11 三次真歩の1on1にラストプレーを託す。しかし、予想外のプレーで結末を迎えた。「三次の1on1で行かせようと指示を出したが、相手のディフェンスにシャットアウトされてしまい、そこに上手くノーマークになった升田が練習通りのコーナーシュートを決めてくれた」と村上監督はラストプレーを説明。キャプテンの #4 升田木花が3ポイントシュートを決め、64-63。劇的な逆転勝利で大阪体育大学が記念すべき第1回大会のチャンピオンとなり、歴史にその名をしっかりと刻んだ。
八幡南高校出身の升田は高校時代に全国大会出場の経験はない。「このチームでバスケをしたい、日本一になりたいんだ」という情熱で大阪体育大学の門を叩いた苦労人が、自らの手で日本一の座をつかんだ。村上監督は、「練習を重ねてきた最後のその1本が逆転のシュートになり、自信になったと思う。新人戦ながら今後のインカレにつながる意味のある大会になった」と邁進する。
互いに誓い合う「ボコボコにします」宣言
ラスト24秒の場面で3ポイントシュートを決めた筑波大学の上野。ラストプレーでキラーパスを通した大阪体育大学の三次。二人のルーキーは昨年、女子U17日本代表でチームメイトとなり、世界と戦った経験の持ち主だ。
優勝を決めた最後の場面を託された三次は、「自分が絶対に点を獲って勝つという気持ちでコートに入りました。でも、いざプレーがはじまると相手はみんなが自分のドライブに対して寄ってきたました。コーナーで空いていた升田さんを信じてパスを出し、それを決めてくれて本当に良かったです」と冷静に状況を判断していた。