元々、今年度の福岡大学附属大濠は、渡邉がいるスタイルで25~30分、今回のスタイル ── 5アウト ── で10~15分という構想でチームを作っていた。その10~15分のスタイルを40分に伸ばすのは簡単なことではなかったが、結果的にはそのチームで福岡第一相手に11点差。インターハイは取り逃したものの、それ以上の収穫があったと言っていい。
「状況によって10~15分だったスタイルが、(今回の経験で)20~25分にできる手応えも得たので、彼らにはそのことを伝えたいです」
ただ、と片峯コーチは釘をさすことも忘れない。
「ただ本当に勝つためには伶音もワールドカップで成長して帰ってきて、世界仕様のバスケットもわからないといけないし、今回チームが得た機動力を持ってやるバスケットもやらなければいけません」
個人としても、チームとしても、それぞれのスタンダードをさらに上げていかなければ、目指すものは手に入れられないと片峯コーチは知っている。
女子の決勝戦で敗れた東海大学付属福岡は、昨夏のインターハイで3位に入り、またウインターカップでも桜花学園(愛知)を破って3位に入賞したチームである。中心にいたファール・アミナタ(日本経済大学1年)こそ卒業したが、#7 浜口さくら、#10 伊良部由明、#11 境さくら、そして2年生の #15 伊東友莉香らは残っている。2月におこなわれた福岡県の新人大会でも優勝を果たし、つい3週間前におこなわれた県大会の中部ブロック予選でも、精華女子を破った福岡大学附属若葉に勝利し、地区1位で県大会に勝ち進んでいる。
しかし、今回は52-57で敗れた。
敗因はいくつもある。得点が伸びていなかったときに、それでも執拗に #20 チャラウ・アミを狙いすぎたこと。後半に入ると、そのターゲットを伊東に変えたことで得点に重ねることができたが、その意思共有がやや遅かった。それだけではない。
「もうちょっと、中、中、中で攻めて来るかなと思っていたんですけど、今日はアウトサイドから思い切ってシュートを打って、そのリバウンドに徹底したところは、私の読み違いもあったなと思います」
精華女子の大上コーチがタイウォにリバウンドを求め、彼女自身もそれでチームに貢献しようとしていたことが、東海大学付属福岡のバスケットを狂わせた。
そして宮﨑優介コーチは、エースである浜口にも、より一層の成長を求める。
「春からずっと浜口がキャッチ&ショットでしか得点を取れていなかったので、口うるさく『やることはもっといっぱいあるぞ』と言っていたんですけど……彼女がエースとしての自覚を持って、うまくいってないときこそディフェンスを頑張ったり、リバウンドに参加するといった精神にならないといけないのかな。そこが今日一番のうちの弱さだったと思います」
エースのさらなる奮起と復活が、巻き返しのカギになる。
今はまだ甘んじていても ── インターハイ2023の福岡県予選を見て(2)へ続く
文・写真 三上太