虎視眈々と、尻上がりに ── 正智深谷
同じ会場のDブロックを1位で抜けたのは京都精華学園。同校といえば、昨年のインターハイ、ウインターカップを制した女子を思い起こすが、男子も京都府の新人大会でも東山を破って優勝するなど、力をつけてきている。なかでも目を引くのは204センチの留学生、ソロモン レイモンド オネカチュク。高さもさることながら、腕が長く、また攻守にわたってハードワークができる。もちろん、同校の中学時代にキャリアを積んできた選手たちもいて、京都府の高校男子を熱くする存在になりそうだ。
その京都精華学園には敗れたものの、予選グループを2位で通過した正智深谷(埼玉)もおもしろい。成田靖コーチが言う。
「これまでの正智深谷で一番大きいチームなので、ゾーンディフェンスなども取り入れながら、チームを作ろうと考えています」
京都招待ではポイントガードを172センチの市川大徳に任せていたが、キャプテンの三村蓮(184センチ)やグビノグン デロック(186センチ)もポイントガードが可能で、そこにシューターの秋穂将斗(182センチ)、センターの中武優羽(191センチ)、岡野一輝(186センチ)らが絡んでくる。スタメン5人を180センチ超で揃えることもできるというわけだ。また新入生にも180センチ以上の有望株が入るようで、それだけに成田コーチも腰を据えてチームを作ろうとしている。
「シンプルなことはできるんですけど、発想力が乏しいのが課題です。手作り感があって一緒にやっていて面白いですけど、私自身は疲れますよね。なんか私がバスケットしているのか、彼らがしているのかといった感じで……」
昨年のエースガード、ルーニー慧のような発想力を持った選手がいないとぼやきながら、成田コーチの声はどこか明るい。2日目にはこんなことも言っていた。
「久々にメンバーが揃って、前日の3試合よりも2日目のほうがいいし、尻上がりによくなっているのを感じます。ゲームでの組み合わせ的な経験不足が、この京都招待でちょっとずつ何か良くなってきているなと」
「大きい分、ざっくりとした、大雑把なバスケットになるんですよね。ボールピックの場面などは直していかないと、無駄な失点があるので、足元をすくわれる可能性もあるんです。でも逆に大きいからこそ、例年のチームだったらやられるところを、高さで助かったというところがあるので、すごく夢はあるなと」
試合中は厳しい言葉も飛ぶが、紐解けば、大きいチームに夢と可能性を感じているからこそ。
「緻密さが出せるようになって、あとは彼らが自分たちの意思で、合っている、間違っている別として、意思表現をプレーでできるようになったら、ちょっと面白いなと思っています」
「不易流行」を掲げる正智深谷が2023年、どんなバスケットを取り入れていくのか。成田コーチと選手たちの意思が合致したとき、全国大会を荒らす存在になる可能性は十分にある。
後編(京都招待2日目)につづく
文・写真 三上太