“台風の目” は育つのか ── 2人のNBAプレーヤーの母校
この2チーム以外にも、注目してしまうチームはある。尽誠学園(香川)と仙台大学附属明成(宮城)である。
尽誠学園は色摩拓也コーチが「まだまだ今年は時間がかかります」と言うとおり、全体8位に終わっている。チームの起点となるポイントガードが定まらないところもあるが、それ以上に尽誠学園の「次のプレー」が見えてこない。
誰だったか、アメリカの高名なコーチが「バスケットボールで一番大事なのは、いつも次のプレーである」と言っていた。たとえばオフェンスのリロケートや、ディフェンスでは危険な匂いのするマッチアップを素早くケアするポジショニングなど、細かいところで “尽誠らしさ” が出ていない。
まったく出ていないわけではなく、それらが散見される場面では攻守ともにスムーズなのだが、それが継続できていない。突然抜ける。抜けると流れが一気に傾く。崩れる。
サイズの有無に関わらず、生き馬の目を抜く尽誠学園のバスケットが、ここからどのように構築されるのか。あるいは彼ら自身がどのように紡いでいくのか。注目したい。
仙台大学附属明成は、ウィリアムス ショーン莉音と佐藤晴のフロントコート陣こそ残ったが、得点源だった八重樫ショーン龍や内藤晴樹らバックコート陣の穴をどう埋めるかが、これからの課題である。佐藤久夫コーチもこう言っている。
「1番ポジション、2番ポジション、3番ポジションのところで上級生には不安材料がたくさんあるんだ。もちろん4番ポジション、5番ポジションも不安定なんだけど、その不安定さをちょっと消してくれるのがやっぱり1番、2番、3番なんだよね。そういうところで新入生の加入はすごく大きいと思う。1年生が入ってきたことによって、上級生がまた持ち直して、やっぱり3年生がしっかりやればね、チームも安定してくるからね」
今大会、仙台大明成は細心の注意を払いながらも新1年生を積極的に起用していた。少しでも早く仙台大明成のバスケットに慣れてもらい、そのうえで上級生との化学反応がどのように見出せそうかを試していたのだろう。
「今はまだ30点くらいの出来だよね。1年生ガードがちょっとちぐはぐだから。それと元来持っている上級生の悪いところも直っていない。だからまだ30点ですよ」
その先に続くのは “佐藤久夫節” である。
「でもさ、まだ点数をつけられるだけいいよ……赤点だけどさ。俺の高校のときの数学の成績が39点だったからさ、それは越して欲しいよね(笑)」
彼らがまず目指すのは40点というところか。
そこから50点、60点、70点……と上げていき、どこまで100点に近づけられるか。評価の目は厳しい。簡単に上げられるものではないが、それが上がってくれば、やはり仙台大明成は上位陣を脅かす存在になってくるだろう。
むろん3位の桜丘、4位の八王子学園八王子、5位の市立船橋なども看過できない。
KAZU CUPを見る限りでは開志国際、福岡第一が強そうだが、近畿を制した東山や、福岡第一と九州で競り合った福岡大学附属大濠、東海には藤枝明誠もある。
春の訪れが早かった2023年。 “台風の目” が生まれるのも、意外と早いのかもしれない。
文・写真 三上太