後輩たちのそんな言葉を松崎に伝えると、「素直にうれしいです」と、照れながら笑った。自分がキャプテンに決まったとき、手本にしたいと思ったのは一昨年のキャプテン津屋一球(サンロッカーズ渋谷)だったという。
「一球さんは厳しいところはあるんですけど、常に自分からチームを盛り上げてみんなを引っ張っていく人で、ああいうキャプテンになりたいと思っていました。自分は(チームの中で)上下関係の意識はあまりなくて、下級生ともいっぱいコミュニケーションを取って全員で勝ちに行こうぜ!と向かっていくようなチームにしたかった。キャプテンとしてどこまでできたかはわからないけど、唯一言い続けてきたのは『インカレで味わった去年の悔しさは今年のインカレでしか晴らせない』ということです。その言葉にみんな本当によく付いてきてくれて、春から一段ずつ階段を上れているような手応えがありました。だから、楽しかったです。さっきも言いましたが、周りがどう思っていようと関係ない。自分の中では俺たちはどんなチームになれるんだろうという楽しみが大きくて、最後は絶対笑って終わってみせるって気持ちで走り続けた1年だったと思います」
もちろん、頼りになる4年生たちが去った後にまったく不安を感じなかったと言えば嘘になるだろう。中でも福岡第一高校でともに戦い全国を制した1年下の河村勇輝がBリーグの舞台を選んだときは「やっぱ、すごく淋しかったです」という。「プレー面でもそうですけど、プライベートでもあいつはめっちゃいいヤツなんで(いなくなるのは)ほんとに淋しかったですね。ただあいつが決めて目指す道を応援したい気持ちはあったし、今も日本代表やBリーグで活躍しているのを見るとうれしいし、自分だけじゃなくみんなすごくいい刺激を受けていると思います」。リスペクトできる1年下の後輩に「おまえ、頑張ってるなあ。だけど、俺たちも頑張ったぞ。頑張って日本一になったぞ」と伝えられることもきっと大きな喜びだろう。
振り返れば、準々決勝の中央大戦、準決勝の日本大戦、そして、白鷗大との決勝戦といずれも最後の最後まで一瞬たりとも気が抜けないタフなゲームだった。大会終了後の記者会見で陸川監督は「追い上げられても落ち着いて戦ってくれた選手たちを称えたい」と語ったが、敗れた白鷗大の網野友雄監督もまた「このインカレの東海大さんのプレーはいろんなチームに勇気を与えてくれた。すばらしいチームだった」と賛辞を送った。
春の敗戦から長いリーグ戦を通して成長の足跡を残し、最後に手にした栄えある優勝。その真ん中にいたのは、どんなときも「大丈夫、大丈夫」「ここから、ここから」「全員で去年の借りを返しに行こうぜ」と声をかけ続けたキャプテンだ。インタビューを終えるとき「今晩あたり人知れず歓喜の涙が流れるかもしれないね」と声をかけると、一瞬真顔で考えたあと「いやぁ、うれしすぎてやっぱり泣けないと思います」と、声をあげて笑った。
文 松原貴実
写真 泉誠一