悔しい思いをした1期生へ届けた初勝利
インカレ初出場の浜松学院大学は73-64で新潟経営大学を下し、初陣を初勝利で飾った。コート上で繰り広げられる歓喜の輪から外れ、ベンチ裏の応援席へ真っ先に向かっていったのは#5 相馬迅だった。
「1期生が応援に来てくれていたので、勝利できたことを伝えにいきました」
浜松学院大学は創部5年目で、はじめてインカレへの出場を決めた。本来であれば、昨年引退した1期生が、初出場の権利を得るはずだった。大口真洋監督も「正直、昨年この舞台に来たかった」とこぼす。2年前、東海リーグ2部を優勝した浜松学院大学だったが、コロナ禍によって昇格できず、インカレへの道も途絶えてしまう。「1期生にとっては本当に悔しい思いをしましたが、今日は彼らも応援に来てくれたし、その気持ちを持って戦うぞっていうのを今の4年生が見せてくれたんですよね」と目を細める。相馬も感謝の思いとともに、ともに戦った仲間たちのもとへ真っ先に駆けていった。
はじめての大舞台ではあるが、高校時代に全国大会出場経験者も多い浜松学院大学。「僕個人としてはそんなに緊張もなく、自分のプレーをまず遂行しようと考えていました」と開志国際高校出身の相馬は平然と初戦に臨む。「浜松学院大学に来なければ、新潟経営大学に進学していました」という新潟出身の相馬にとって、#33 笹井幹太らミニバスから知った仲間も多く落ち着いて試合に入ることができた。第3クォーターに追いつかれたときも、相馬が3ポイントシュートを決めて突き放す。「友だちも多いので、そいつに決められたら、自分も決めようという気持ちで戦っていました」と熱くなる。試合後、敵将の田巻信吾監督が相馬に対し、「お前にやられたよ」と笑顔で言葉を交わした。
自然体で臨めた選手とは打って変わり、「楽しみでしょうがなかったのですが、正直僕はめっちゃ緊張するんで…」というのは大口監督。三遠ネオフェニックスのプレーヤーだった元プロ選手だが、「コートに入る前までは、ずっとどうしようどうしょうって迷ってました」と汗を拭う。選手や学生コーチらが落ち着いていたコートに入ったことで、「みんなを頼りながらできるので、一人で戦っていないという意味ではすごく力強かったですね」とチーム一丸でつかんだ1勝だった。
三遠ネオフェニックスが支える環境の良さ
2期生となる相馬が浜松学院大学を選んだ理由は、「環境の良さ」である。ユニフォームの背中には三遠ネオフェニックスのロゴが入っており、その三遠から大口監督も派遣されている。「高校時代から将来的にはプロを目指してたので、環境がすごくいいのかなと思ってこの大学を選びました」と相馬は言う。具体的には、「プロの存在が近いのでいろいろ知ることができ、もちろん練習とかも参加できます」というメリットがある。
ユースチームが活性化するBリーグ。浜松学院大学にも、今年は三遠U18チームから選手を迎えた。U15で中学生、U18は高校生、そして浜松学院大学へつながる育成環境は素晴らしい。しかし、まだはじまったばかりであり、「フェニックス自体もいろいろ体制が変わったので、これからもう1回構築しはじめていき、まだ作って行く段階です」と大口監督は話し、今後も注目である。
チーム全員が声をかけ合い、雰囲気の良い浜松学院大学はグループステージ突破できるかどうかは、次の東海大学札幌戦にかかっている。初出場チームが目指す先は、「勝ち進んでいけば白鷗大学と対戦できます。あと2勝すれば実現できるので、そこを目指しています。どこまで通用するのか試せるのがすごく楽しみですし、そこまで勝てるようにがんばっていきたいです」と相馬は言い、大学チャンピオンとの対戦をモチベーションに変え、次の戦いへ向かう。
文・写真 泉誠一