番狂わせが相次いだFIFAワールドカップのグループステージを終えて16強が出揃い、負ければ終わるノックアウトステージがはじまった。1点を争うサッカーはジャイアントキリングが起こりやすいスポーツであり、世界中を熱狂させる。得点を取り合うバスケは波乱が起きにくい。しかし、一発勝負のトーナメントでは、何が起こるかは分からない。世界一を決めるNCAA全米バスケットボール選手権でも、初戦に番狂わせが起こることは少なくない。
大学日本一を決めるインカレ(第74回全日本大学バスケットボール選手権大会)がはじまった。今年からレギュレーションが変更となり、下位チームは8ブロックに分かれ、各3チームずつ総当たりのグループステージからはじまる。シード校は、すでに2試合を終えたチームとの初戦に臨む。波乱が起きそうな予感がしている。
周南公立大学vs仙台大学は、昨年のインカレで1回戦敗退した同士の対戦。10点リードする仙台大学は主力を温存し、迎えた第4クォーター。周南公立大学が怒涛の追い上げを見せ、シーソーゲームとなる。主力を戻した仙台大学が71-69で勝ち切ったが、「悔しい勝利でした」というのはキャプテンの#74 相澤正輝だ。
3度目のインカレに挑む4年生の相澤は、「昨年も代々木で勝てなくて悔しい思いをし、みんなで1年間がんばってきました。先輩の思いも一緒に臨み、勝ち方はあまり良くなかったですけど、とりあえず1勝できたので、そこは自信を持って次の九州共立大学戦に臨みたいです」と、3度目の正直で初勝利を挙げた。
昨年のインカレで15分以上プレータイムを与えられたのは相澤とともに#00 高橋梓、#12 仲里有人など「経験が少ないメンバーなので、やっぱり緊張もありました。また、代々木の独特な雰囲気や相手の追い上げもすごかったです」と年に1度の晴れ舞台は勝手が違う。押されている時間帯は、ベンチから「練習どおりやればいい」という仲間たちの声がけも、本来のプレーではなかったことの現れと言える。それでも第4クォーター中盤、同点に追いつかれた仙台大学は主力を戻すと、「高橋や仲里が最後は締めてくれたので、そこはホッとします」と相澤は安堵し、1勝目を挙げた。
敗れた周南公立大学だが、「まだ大会は終わったわけではないので、次こそ勝ち切って、しっかりと点差を開けて勝って1位通過し、本戦に上がれるようにがんばりたいです」と#26 山本奥賀は気持ちを切り替える。「チーム全員で最後まであきらめずに戦ったんですけど、やっぱり勝ち切れなかったのは悔しいです」というほど惜しい試合だった。だからこそ、「最後まで集中できたのは良かったです」という見事な追い上げを自信とし、次戦で勝利して望みをつなぐ。
周南公立大学は今春開学したばかりだが、旧・徳山大学であり、インカレには9年連続17回目の出場となる。バスケ部自体も変革を迎え、「監督がいなくなり、学生主体のチームに切り替わりました」と山本は明かす。インカレでは「より一致団結して、この大会を通して勝ち切ろうとチームで決めました。1試合1試合を全部集中して取り組んでいきたいです」という力を、1戦目は少なからず見せることができた。昨年であればここで終わりだったが、リーグ戦になったことでもう1試合できる。新しいレギュレーションに対し、「チャンスと捉えています」と山本は言い、勝利を目指す。
勝っても負けても、筋書きのないドラマに熱狂させられる季節がやってきた。グループステージ突破の勢いに乗り、ジャアントキリングに期待したい。
文・写真 泉誠一