「勇輝が活躍しているからこそ自分もがんばれています」
今シーズンを振り返れば、最初のスプリングトーナメントは2部に昇格したばかりの山梨学院大学に72-75で敗れ、ベスト16に終わる。小川自身は30点を挙げたが、チームを勝たせることはできなかった。その後の新人戦では後輩たちが躍動し、関東ルーキーズトーナメントで21年ぶりの優勝を飾った。「1年生がガムシャラに戦ったことで優勝につながり、その勢いのまま自分たちにプレッシャーをかけるように、下から突き上げてくれたことがチームにとってもプラスになりました。1年生だから遠慮するような選手がいないので、チームに良い影響を与えてくれています」と高め合う。1年生の月岡煕はさらに成長した姿を見せ、オータムリーグ戦では先輩たちを抑えてMIP賞に選ばれている。
リーグ戦は8位に終わった日本体育大学だが、仕切り直して迎えるインカレでは日本一を狙うダークホース。「誰にも負けたくないという気持ちが強いです。マッチアップしたときには『ぶち抜いてやろう』『決めてやろう』という気持ちでやっています」と小川は自信をみなぎらせる。負けん気が強いことは、裏返せばともに戦ってきた仲間や素晴らしいライバルがいるからこそである。高校時代は河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)とコンビを組み、福岡第一高校を2年連続で日本一へと導いた立役者。東海大学を辞めてプロとなり、今では日本代表として世界と戦うかつての相棒の存在はもちろん刺激になっている。
「悔しいというか……率直にすごいのひと言なんですが、上のレベルであれだけやれているところを見ると、やっぱり自分は今のままではトップレベルにはなれないな、と感じています。勇輝がたくさん努力して来たのは、高校のときから側で見ていて知っているし、それによって結果を残せているのも分かってます。今は自分も負けないように、勇輝が活躍しているからこそ自分もがんばれています」
日本一を知る小川だからこそ、「誰にも負けたくない」「チームを勝たせたい」と常に勝利を渇望する。「今年の新人インカレでは後輩たちが決勝に進み、先を越されて全国2位の良い結果を残しています。高校以来、日本一になっていないので、今年のインカレでは4年生の先輩たちと藤田(将弘)さんに良い思いをさせられるようにこの1ヶ月間でしっかりと調整して、全力でがんばっていきたいです」という3年生の小川がチームをまとめて高みを目指す。
今年も本命不在のインカレになりそうであり、どのチームも日本一になれるチャンスがある。12月3日の開幕へ向けてコンディションを高めるとともに、はじめて採用される3チーム総当たりのリーグ戦(グループステージ)を戦いながら大会を通じて成長させていくことが勝利のカギを握る。チーム力を上げていくためにも逆算して何ができるか。しっかりと準備をし、さらに頼もしくなった姿でコートに戻って来る日が待ち遠しい。
文・写真 泉誠一