「負けた試合もただ負けたわけではないし、どうしても勝てなかった相手でもなかった」中野友都
中野や高橋をはじめ、下級生が中心となる中京大学は「普段のチーム作りの延長として練習してきたので、特に今大会へ向けて意識して行ったことはありません。インカレの前哨戦という捉え方でした」と松藤監督は言い、大きく成長できる機会になった。関東勢と対戦した際、フィジカルやディフェンスの強度の違いに屈する他地域チームが多い中、「フィジカル面は全然大丈夫だと思っていました」と松藤監督が言うほど、鍛え上げてきた。攻めても守ってもヒットファーストで自ら体を当てていくプレーで相手を嫌がらせ、スペースを作って行った。
特筆すべきはリバウンド力だ。筑波大学戦は52-44、日本体育大学戦は48-36、最後の日本大学戦も45-44といずれもリバウンドで上回っている。関東勢から2勝をもぎ取ったのも、リバウンドを制したことが大きい。逆に、それでも勝ち切れなかった日本体育大学戦を踏まえ、関東との違いについて松藤監督は言及する。
「筑波大、日体大、日大というこんな厳しい3連戦は、普段の東海地区では経験できない状況です。この高いレベルの戦いを、今大会やインカレに来てはじめて経験すれば、やっぱり面を喰らってしまいます。普段からこのレベルの戦いを想定して意識を持ち続けていくことで、関東勢との戦いも平然と臨めるようになれば良いのですが…。東海地区では1つビッグゲームをしても、次は楽な試合になるような差があります。その経験差を埋めるのは難しいですが、今大会で関東のチームと3連戦できたことが、我々にとってはすごくプラスになりました」
今大会がはじまる前、白鷗大学との練習試合を行ってきたことも功を奏したと松藤監督は明かし、この強度をどう保っていくかがカギを握る。
3位になった中京大学から中野は得点王となり、1年生の高橋が優秀選手賞に選出され、アシスト王も受賞。この二人にとっては、刺激的な1ヶ月でもあった。中野は、女子日本代表の強化試合の前座として行われた日本学生選抜に選ばれ、男子U22日本代表に勝利。その後、その男子U22日本代表合宿には2人揃って招集されている。勢いに乗って臨んだ今大会では、「全国でベスト4というのはチームの歴史でもなかなかなかったことですし、そこは自信になりました。負けた試合もただ負けたわけではないし、どうしても勝てなかった相手でもなかったです。今回の負けを糧とし、今後に活かしていきたいです」と中野は話し、今後の戦いに向けてやるべきことが明確になった。
日本体育大学に敗れた後、「もう負けないです」と力強く語った中野が、有言実行ですぐさま日本大学に勝利した。インカレまでその強いメンタルを持続し、今大会で成長したリーダーシップを発揮することで同じような結果、またはそれ以上も期待できる。下級生チームゆえに今年は叶わなくても、未来は明るい。
文・写真 泉誠一