福岡第一高校時代の先輩に向かって行く白鷗大学1年の#78 佐藤涼成の強気な姿が微笑ましい。1学年上の#3 ハーパー ジャン ローレンス ジュニア(東海大学2年)もまた、フリースローへ向かう佐藤に手を伸ばして邪魔をする。いたずらっ子のような二人であり、佐藤は「前日の夜は楽しみすぎて、なかなか寝付けなかったです」と言うほど、ハーパー先輩とのマッチアップを心待ちにしていた。
白鷗大学ロスターの中で、準優勝した春のトーナメント(関東大学バスケットボール選手権大会)を経験したのは佐藤とジョエル モンガ(1年)の2人しかいない。「先輩たちがいることで、自分を出し切ってチームに貢献すれば良かった」というトーナメントとは違い、先発ポイントガードとして起用された新人戦は「どうすればチームを勝たせるかを考えて毎試合戦っていた」という違いが大きい。その戦いの中で佐藤は「メンタルを鍛えられ、また強くなった」と成長を実感している。
トーナメント決勝で苦汁を飲まされた専修大学に77-61で勝利し、リベンジを果たす。しかし、続く準々決勝で日本大学に65-74で敗れる。順位決定戦では、関東学院大学を81-70で下し、最後の5位決定戦は東海大学と対戦。第1クォーターに2つのファウルを犯した佐藤は、早々にベンチへ下げられてしまう。ファウルの数こそ気にしていなかったが、「すぐにマッチアップしたい」と昂ぶる気持ちを抑えられずにいた。第2クォーター途中よりコートに戻ると、ふたたびバチバチのマッチアップが火花を散らす。佐藤がディフェンスに意識を向けたことで、今度はハーパーのファウルが2つとなり、これでイーブン。試合も36-33で白鷗大学が僅差ながらリードしていたが、どちらも譲らぬまま後半へ向かって行った。
白鷗大学は激しいディフェンスから速攻を狙うスタイルであり、「そこは福岡第一高校に似ているので、すごくやりやすい」と佐藤は言う。だからこそ、入学したばかりのトーナメントからプレータイムを与えられ、その期待に応えてきた。「福岡第一高校では、井手口(孝)先生のもとでディフェンス練習を徹底してきたので、そこはプライドを持っています」と積極的に前へ出て行く。ベンチから白鷗大学の網野友雄監督や石井悠右アシスタントコーチが声をかけ、「守るポイントが分かってプレーできていました」というサポートも大きな力になっていた。
ディフェンスで凌駕した白鷗大学が73-67で勝利し、5位で今大会を終えた。高校の先輩であり、かつての仲間とマッチアップした佐藤は、「不思議な感じもあります」と振り返る。試合中、二人はトラッシュトークに花を咲かせていた。シュートを決めた佐藤が「1-0」と高らかに勝ち誇れば、すぐさまバスケットカウントを決めたハーパーが「まだ1-1だぞ」とやり返す。
「レベルの高いジュニアさんと試合ができたことは、自分にとっては宝物のような時間でした。福岡第一高校時代は仲間だったからこそ、絶対に負けられないという気持ちも強かったです」
ハーパーvs佐藤のマッチアップはまだまだはじまったばかりであり、決着をつけるのは何年先になっても良い。
文・写真 泉誠一