帝京長岡の場合、留学生を除くと決してサイズに恵まれているわけではない。それでも名だたる強豪をなぎ倒して2度の準優勝。脚を動かす、ディフェンスで体を張るといった小さいチームが取るべきスタイルを体現したことは間違いなく、それを結果に結びつけてみせたことは誇るべきことだ。しかし、柴田コーチは「相手の能力や高さに対して僕自身も心配しているところがあったんですが、コートに立ってみたら非常に堂々として、身長や体格以上のプレーも立ち振る舞いもしてくれた。本当に誇らしいです」と語る一方で「小さいチームのバスケットが全てではない」とも言い、あらゆるチームと切磋琢磨したことに価値を見出している。
「オリンピックの女子代表は感動を呼びましたが、だからといって小さいだけが良いわけでもないと思うんです。小さかろうと大きかろうと、バランスの良いチームであろうと、バスケットを盛り立てていける。それぞれにチームの特徴があって、このウインターカップは素晴らしいチームが多かったと感じました」
帝京長岡は地元開催のインターハイで準優勝までのぼり詰めただけに、残された目標はウインターカップでの優勝しかないという気持ちを強く持っていたに違いない。残念ながらその目標には達し得なかったものの、同じ準優勝でも夏より成長した姿を見ることができたと柴田コーチは振り返る。この4カ月ほどで、彼らはさらに一回り大きくなった。
「だからこそ勝たせてあげたかったなと思いますね。練習もよく頑張ったし、最後まで脚を動かそうとかフィジカル強くというのはどのチームも目指しているとは思うんですが、その中で我々には少し良いところがあったと思います。それは1人では体現できないので、選手みんなの関係性がそういうエナジーに変わって、チームの姿になっていく。3年生がよく引っ張ってくれたと思います」
インターハイでは優勝の経験もある新潟県勢も、ウインターカップに限れば決勝進出も今回が初めてのことだった。その事実は柴田コーチにとっても意外だったらしく、「新潟県はすごく輝かしい歴史があるので、初めてというのは昨日知ったんです」と明かす。それでも「気負うことなく、気弱になることもなく、彼らはよくやってくれたと思います」と選手たちを称賛。そして、今大会に新潟県男子が3校出場したということもあり、「これで小学校や中学校のカテゴリーもさらに盛り上がって、僕らもそういった子たちを預かって先に続く指導ができたらと思っています」と県内のさらなるレベル向上、バスケット熱の高まりに寄与したい意志も示した。
柴田コーチが着任して12年目となる帝京長岡からは星野曹樹や遠藤善(ともに新潟アルビレックスBB)など、大学を経てプロに進む選手も現れ始めた。2人が揃って新潟県出身であるように、私立校ながら県外出身者は比較的少なく、今大会のベンチ入りメンバーも県内出身者が多数を占める。常に選手に寄り添い、支えとなる柴田コーチに能力を引き出され、新潟県内にとどまらず日本中を沸かせるスターが誕生するのは、そう遠い未来のことではないだろう。
文 吉川哲彦
写真 日本バスケットボール協会