ウインターカップのような注目度の高い大会は、バスケット専門のメディアのみならず主要スポーツ紙や在京キー局、そしてローカルメディアも大挙東京体育館に詰めかけ、決勝戦ともなれば報道陣の数はもしかするとBリーグやWリーグのファイナルよりも多いのではないか。特に、男子決勝は地上波で生中継されるくらいだから、その注目度は推して知るべしだ。女子バスケットが過去最大級の脚光を浴びる今、何故女子決勝が地上波生中継されなかったのかという思いもあるが、それは本稿の主題から逸れるため割愛する。
実は今大会の男子決勝において、筆者は記者席がほとんど空いていなかったためプレスルームでのインターネット配信視聴を選択した。バスケットを世間に広く知らしめる上で、専門ではないメディアにその機会を譲ることも場合によっては必要であり、ここはまさにそういう機会だっただろう。もちろん、個人的に会場の雰囲気を体感することができないのはデメリットなのだが、その代わりにネット配信を見たことで思いがけない収穫を得ることができた。それは、両者が第3クォーターまで一度も取らず、第4クォーターになってやっと訪れたタイムアウトの場面である。
両者とは、言うに及ばず福岡大大濠と帝京長岡。福岡大大濠のベンチからも片峯聡太コーチの口から「主張と尊重」という興味深いワードが出てきたのだが、今回取り上げるのは帝京長岡の柴田勲コーチだ。3点ビハインドの残り1分12秒で取ったタイムアウトの際、ガンマイクが拾った柴田コーチの声で特に印象的だったのが「さっきのオフェンス良かったなぁ! 最後までやろうよ!」という締めくくりの言葉。結局その3点差を縮めることはできなかったが、帝京長岡がインターハイに続いて準優勝という素晴らしい結果を残したのは、柴田コーチのポジティブな声かけもその要因の一つと強く感じられた。
「選手が気持ちよくできるように努めたいとは思っていて、練習や練習試合では逆に厳しいことを言うことも多いんですが、こういう舞台で良いプレーができるように僕がサポートできるのはそういうところだと思うんです。今日は持てる力を出してくれたと思います。指導のメリハリに関してはまだ勉強中で、僕なんかはうるさすぎるんじゃないですか(笑)。落ち着きのないベンチワークだなと思うんですけどね」
ディフェンスの時間帯は自らもベンチ前でステイローの体勢を取るなど、選手とともに戦っている姿勢も見られた。「6人目のディフェンスなんていうのはおこがましいですが」と柴田コーチは謙遜するが、まだ心の揺れ動きやすい高校生にとってその姿がどれほど心強いことか。柴田コーチは彼らが信じる最後の砦、最大の心の拠りどころになっていたのだ。