もう一つ、西海学園の選手たちにとって良いモチベーションになっているのが、今シーズンB3リーグに参入した長崎ヴェルカの存在だ。クラブ設立発表当初からバスケットファンの間で話題を呼び、B1経験者を多数招き入れるなどインパクトのあるチーム作りでリーグ首位(2021年12月28日現在)を走るヴェルカは、西海学園のある佐世保市にクラブの拠点があり、今大会の県予選決勝は大村市で開催されたヴェルカホームゲームの前座試合として行われた。試合後にヴェルカの試合を観戦した小田代は、プロ選手の姿に大いに刺激を受けたようだ。
「プロが身近になった実感はあります。ヴェルカの試合を見て、フィジカルとシュート確率、全力でディフェンスする感じが自分たちには足りないと思いました。特に、ディフェンスを頑張って速攻に持っていくスタイルは、見ていて気持ちが上がります」
また、鍛治コーチも「ヴェルカができて、バスケット熱の盛り上がりはすごく感じますね」と語り、「大学に4人ほど進むんですが、その後はヴェルカに限らずBリーグに行きたいと言っている子もいます」と明かしてくれた。プロが与える影響力の強さや地元クラブの存在意義の重さを感じると同時に、身近な環境に刺激を受けてバスケットにより一層打ち込む高校生の純粋さやひたむきさも改めて感じることができる。
2回戦でも桐生第一を破り、長崎県勢男子としては田中大貴(現・アルバルク東京)を擁した長崎西以来12年ぶりのベスト16進出。3回戦ではインターハイでも対戦した仙台大明成と再び激突し、前回優勝校の地力に圧倒されたまま大敗を喫して西海学園の冬は幕を閉じた。「大会を通して粘り強くやれたとは思うんですが、他のチームを見ていると、まだまだやらないといけないことがたくさんあると感じました」と振り返る鍛治コーチは、「高いレベルを体感できたので、この経験を次につなげていきたいですね」ともう一つ上のステージへの意欲を見せる。ベスト8に入れば、東京体育館のメインコートが待っている。もし来年以降、その華やかな舞台に西海学園の姿があるとすれば、多くの観客が気力に満ちあふれた彼らの姿に何かを感じるはずだ。
文 吉川哲彦
写真 日本バスケットボール協会